空座町 午後7時13分 金曜日。



道のど真ん中で顔から血を流し地面に伏せる不良1
ー…愛称は 山ちゃん。




「なんだァ!?
いきなり出てきて山ちゃん蹴飛ばしといて
その上ここをどけだァ!?」


「何考えてんだてめぇ死ぬか!?」





山ちゃんが属する不良グループはオレンジ色の髪を持つ男女と対峙していた。

スケートボードで遊んで居たところ、そこを通りかかったオレンジ髪の少年に後ろから蹴り飛ばされたのだ




「一護、急がないともう19時回ってるよ」




黒崎 凉音/15歳

髪色/オレンジ
瞳色/水縹
職業/高校生
特技/料理




「わーってるよ、すぐ済むからそこで待ってろ」




黒崎 一護/15歳

髪色/オレンジ
瞳色/ブラウン
職業/高校生
特技/ユウレイがみえる





少年は面倒くさそうに頭を掻き、
少女は地面に転がっていた花瓶を元に戻す。


不良グループは喧嘩を吹っかけられたと感じているが、2人は喧嘩をふっかけるために山ちゃんを蹴り飛ばした訳ではない。

彼らが電柱のそばに供えられていた花瓶を倒し、この場所で騒がしく暴れていたから"ここにいる少女"の代わりにこうして鉄槌を下しているわけだ




「おいおい、彼女と一緒にいるからってカッコつけねんじゃねぇぞ」

「彼女ー、こんな男やめて俺たちと遊ぼうや」


「あァ?」




凉音の位置から一護の顔を見る事は叶わなかったが彼の声色で眉間のシワが3割増しになったことはわかった。

しかし喧嘩を止める気はこれっぽっちも無い。
寧ろ本当は参加したいくらいなのだ、けれど調子に乗って喧嘩に参加してしまえば後からきつく怒られてしまうのが目に見えているからこうして見学に徹していると言うわけだ




「おーい、彼女」
「無視?俺たち傷ついちゃうー」




話さない、どころかチラリともこちらを見ない凉音に痺れを切らした不良2が下品な笑いを引っ提げ凉音の元へと歩き出した
が、しかし凉音と不良のちょうど真ん中に立つ一護がそれを許すはずも無く不良2は一護の蹴りによって地に伏せた


途端に騒ぎ出す不良。





「ギャーギャーうるせぇ!
テメーら全員あれをみろ!」




そう言って指さす先には先程凉音が直したばかりの花瓶





「問一、あれは一体なんでしょうか!?
はい!そこの一番くさそうなお前!」


「えぇ!?この間ここで死んだガキへのお供え物」


「大正解!」

「みっちゃん!!」




突然始まったクイズに戸惑いながらもしっかりと答えた上に正解までしたのに一護の容赦ない飛び蹴りに吹っ飛ぶ不良




「問二、じゃあどうしてあの花瓶は倒れてたんでしょうか?」




一護の最後の問に顔に玉のような汗をかいた不良がゆっくりと口を開く…




「それは…俺らがスケボーして倒しちゃった…か、ら」


「テメーらにも花を添えなきゃなんねぇようにしてやるぜ!?」


「ごめんなさいー!」




情けない叫び声を上げながら走り去って言った不良たちをみて凉音は満足げに鼻を鳴らした




「ふぅ、こんだけおどかしときゃもうここには寄り付かんだろ
新しい花明日には持ってきてやるよ」





ひと仕事終えた一護はふよふよと浮かぶ少女と何か話している


いいなあ、私も話してみたい…
私は一護や夏梨とは違って姿は見えても、声も聞こえなければ触れることも出来ないから意思疎通できる2人が少し羨ましい

2人はきっと話せてもいいことなんて何も無い、なんて言うんだろうけど




「凉音。
お姉ちゃんもありがとう、だってよ」


「ふふ、どういたしまして」

「早めに成仏しろよ」





幽霊の少女とさよならして、ようやく帰路につく。


私たちの家は町医者で人様の命を預かったり預からなかったりしているせいなのか、私も一護も妹たちも差こそあれ物心ついた時から幽霊が見える





「ねぇ、あの人たち山ちゃん忘れて帰ったけど良いのかなぁ
家まで届けてあげる?」


「そんなんほっとけ、第一あいつの家なんて知らねぇだろ
それに早く帰んねぇと親父の奴が…」





そうそう、おじさん。
この黒崎家の大黒柱が過保護というかやっかいで…

黒崎家の夜ご飯は家族揃って7時ぴったりと言うルールを作った張本人で、しかもそれは私達が高校生になった今でも変わらず適応されていて…
家族円満のためにとてもいいルールだとは思うんだけど毎日は正直しんどい。

それは一護も私と同意見みたいでたまにぶちぶち文句を言ってるのを聞く、
文句言ったっておじさんは聞く耳を持たないんだけどね






「凉音?ボーッとしてどうした、辛いか?」




歩くスピードをゆるめたから体調が悪いと勘違いしたのか一護が私と顔を覗き込む
ごめんね、おじさんに文句言ってただけなの


昔から身体が弱くて心配ばかりかけていたせいで黒崎家の人達は私に対してかなり過保護
高校に入ってからは毎日学校に行って、体育くらいならこなせちゃうくらいまでには強くなったけど




「ううん、平気。最近身体の調子はいいの
ただ、夜ご飯何かなぁって考えてただけ」

「お前はホント食べるの好きだよな」




そうなんです、遊子のご飯はすごく楽しみ
だけどただいまのお時間は約8時、めんどくさい事になるぞ…




「ただいまー」


「おそおおぉおおい!」




予想通り玄関の扉を開けた途端に飛びかかってくるおじさんを予定通り躱して家へと入る



後ろではおじさんと一護が揉み合ってるけど…一護には悪いけど囮になってもらおう!

だって1秒でも早く遊子の作ってくれたおいしいごはんが食べたいのにお父さんと無駄他じゃれ合いをしてる暇はない





「おかえり、すず姉」


「おかえりなさい、今日はお姉ちゃんの好きなハンバーグだよ!」


「わあ、遊子のハンバーグ大好き
明日こそは私が作るから遊子は遊んできなね」


「やめときな、すず姉。
おっそろしいほど料理センス無いんだからさ」


「失礼な、料理センスがないなんて!」


「お料理は楽しいから私は大丈夫だけど…
私はお姉ちゃんのごはんもすきだよ」


「そうだよねえ!おいしいよ?」




遊子もこう言ってる、と言う意味も込めて夏梨を見れば分かってないなぁとでも言いたそうな顔で見られた




「あんなの食べてたらハゲはいいとして、
あたしと一兄が死んじゃうよ」




すず姉はそれでもいいの?と言う夏梨に言葉が詰まる。

というか私のご飯を食べて死ぬってすごく貶されてる気もするけど…死ぬのは、良くない。





「…遊子に任せる…」

「ったく、どっちが姉かわかんねぇな」




お父さんとプロレス技をキメ合った状態でニヤニヤと意地悪な顔をする一護




「一護だって料理出来ないくせに!
いまどき男子は料理が出来ないともてないんだよ」




ついでに何時も眉間にシワを刻んでるからモテないんだよ!





「お前も変な料理ばっか作ってると彼氏できねぇぞ」


「かっ彼氏ィー!?
お父さんは許しませんからね!?」

「うるせぇ!」

「ぐほ…ッ」




お父さんは一護の耳元で叫ぶから蹴られるんだよ…

まったく、美味しいご飯にホコリが入るから喧嘩はよそでやって欲しいですなあ




「一兄、もう新しい人ついてるよ」


「い、いつのまに!?
祓っても祓ってもこれだ、ちくしょう!」




うるさいおじさんと次から次に憑く幽霊に機嫌を悪くした一護はご飯も食べず2階に上がってしまった
遊子の美味しいご飯を食べないなんて…まったく。


それにしても遊子ってばまた料理の腕をあげた気がする





「あ、私明日織姫のうちに泊まるから」

「誰だ!?男か!?
ついに男ができたのか!?お父さんは許しません!」


「はいはい、明日の準備してこよーっと」




姫だって言うのに男か男かとうるさいおじさんを無視して私も2階へあがる




「あっ、凉音!待ちなさいっ」


「うるさいハゲ親父」

「真咲ー…思春期なのか娘が冷たいよ…」





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