08

漸く学校にも慣れて一人で歩いても迷子になることが無くなったと思った矢先、普段立ち寄らない廊下にあるトイレに寄ったおかげで迷子になって授業に遅刻してしまった。

こんな事になるなら誰かについてきてもらえばよかったんだけれど…、1人でトイレにも行けないなんて知られたら島のみんなに笑われてしまうもの

そんなのって恥ずかしすぎる。


廊下から教室を覗けばリリーやベラには呆れたような視線を送られてしまったけれどスラグホーン先生は特に気にすることなく教室に入れてくれた


けれど、問題はペアだ。

先生に適当に決められた相手に問題があった…遅刻した私が悪いんだけど…。




「や、やぁよろしく」




目の前の彼は気まずそうに目を逸らした


いつもはぺティグリューと組んでるのをよく見かけるけれど
ぺティグリューは…、いないみたい。





『…よろしく、ルーピン』




居心地の悪い空気が私たちの周りに流れる


ホグワーツに入って、同じグリフィンドールにいる訳だけど彼と話したことは、きっと両手で足りる程しかない

いつもの2人がセブルスに何かを仕掛けている時も手伝うピーターとも違って眉間に皺を寄せていたり、我関せずと本を読んでいるところをよく見る

見て見ぬ振りをしている時点でルーピンの事も好きではないけれど、実行犯よりはまだいい。




『やりましょうか』

「うん」



必要最低限の会話だけして、教科書をみながら調合を進めていくとあることに気がついた。

少し前からアレ?とは思ってた、それが確信に変わったって感じ





『ねぇ、ルーピンって調合苦手なの?』

「う、うんフォーサイスも?」

『…うん。』





さっきから教科書通りにやっていると言うのに一向に望む変化が得られない

鍋の中が黄色になるはずなのに、どす黒い黒。
それだけではなくて何だかどろどろしてるし…。





「どこで間違えたんだろう…」


『しばらくほっておけば黄色になるのかな』




2人で鍋をのぞき込む、
しばらく観察してみるけど黄色くなる気配は…ない。

茹でたナメクジを入れるタイミングが早かったかな?
思い当たることと言えばそれくらい


つん、と黒い液体をつつけばボコリと粘着質な泡が出てきた




『…ひっ』


「フォーサイス、下がって…!」



ルーピンにローブを引っ張られて鍋から離れると

すぐにプスプスと黒い煙が出て次に瞬きした時には鍋は大きな音をたてて爆発を起こし中の液体が私とルーピンに降りかかった



「サラ!!」



生徒の叫び声の中で、リリーが高い声で私の名を叫んだのがよく聞こえた
いつもポッター達を叱りつけるために大声を出し慣れているせいか他の人達よく通る声


幸い私達は教室の一番端で調合していたものだから鍋の中身が他の生徒にかかることはなかったものの液体はかなり広範囲に飛び散った

うえ、粘りがあって気持ち悪い
これ絶対あのナメクジの滑りだよ…


「大丈夫なの!?」



リリーやジャスミンたちが悲鳴に似た音をあげながら駆け寄ってくる
ブラックやポッターは笑い転げてるけど





「いったい何をどうしたら…!
とにかく、2人とも一応医務室に行きましょう
ほかの皆さんは自習を」




スラグホーン先生は顔を青くしてみんなにそれだけ告げて私たちを医務室へと送り届けてくれた

…病院も医務室も嫌い…



「痛いところは?」

『いいえ、特に』

「では、何かおかしな所は?」

「なにも」




質問を沢山されて、マダムに検査をされて…
私は痛いことをされないか内心ずっとヒヤヒヤしてた




「大丈夫そうですね。

今回は害がないものだったからよかったものの!
どうして爆発なんて起したんですか
リーマス・J・ルーピン、またあなたやその友達の仕業じゃないではないでしょうね?」


「…いえ、違います」


「もう少しここで様子を見ましょう、私はそれを拭くタオルをとってきますから大人しくしておいてくださいね」




医務室に二人っきりになって、顔を見合わせるとお互いに黒い液体で汚れていて…笑い出したのはほぼ同じだった。




『ルーピンって、勉強得意そうなのに調合は苦手なんだね、意外だった』


「フォーサイスのほうこそ、
いつも合格をもらっていたからてっきり得意なんだと思ってたよ」


『あれはいつもリリーが頑張ってくれててー…』





意外と話しやすいんだ、そう思ったのはどっちが先だったか。

少しの沈黙のあと、口を開いたのはルーピンだった



「ー…ごめん。」


「セブルス・スネイプのこと…僕、止められなくて…」




床のシミを見つめたまま謝るルーピンの顔は苦しそうに歪んでいた




『悪いと思ってるのなら、どうして…』


「ジェームズや、みんなは大切な友達で…
僕、ホグワーツで友達はできないと思って諦めてたんだ
でも彼らは僕と友達になってくれて…、だから…」



ルーピンが何を言いたいのかは正直よくわからない

けれど言葉が纏まらないまま、眉間にシワを寄せて話すルーピンをみてサラは彼になにかを感じた

だからと言って許す訳では無いし、
この前のイタズラのことを謝るつもりもないけれど。





『私に謝られても困る。
けど、悪いと思ってるんだね…

あの2人よりは仲良くできそう』





眉を下げて笑うサラをみて、ルーピンも困った様に笑った





「あ、もう一つ。
この前、あー…ハロウィンの日、ケーキありがとう
すごく美味しかったよ」


『あー…うん。
ルーピンは甘いものが好きってジェームズに聞いてたから』


「来年は、きちんと返すから」


『ふふ、期待してる
私来年はお菓子に魔法かけようと思ってるから楽しみにして置いて』




そう告げるとルーピンは顔を青くした






「もうこの前のクッキーみたいなのはごめんだよ」


『次はもっと強力なのにするわ、
アレだって1週間は持つはずだったのに…やっぱりマダムポンプリーはすぐに解毒剤を作っちゃうし…』


「フォーサイスも中々の悪戯好きだね」


『…否定はできないなあ
考えてる時は楽しいし、成功した時の達成感だって好き』






医務室から帰ってからもポッターは飽きることなく私に話しかけてくる

サラはポケットからキャンディを取り出し未だ一人で話し続けるポッターの口にそれを放り込んだ



「これはなんだい?」




なんの疑いもなくゴリゴリと噛み砕くポッターにサラは抑揚のない声で一言




『話せなくなるキャンディー』




吐き出せ!!と騒ぐシリウスをみてサラは少し意地悪く笑う

いたずらは楽しい、それは認める
けれどやっぱりこの人は好きじゃない。




『嘘、ふつうのキャンディーよ
沢山あげるからそれ舐めてる間私に話しかけないで』

「サラはどうしたら僕とマトモに話してくれるんだい?」


『……そうね、セブルスをバカにしないって言うんなら』


「ああ、わかった!」




即答するジェームズに私は目を見開いた

私が彼と話して、彼への"いたずら"が無くなるのなら悪戯仕掛け人にも喜んで入る




「おい、勝手に決めんなよ!」


「ばれないようにコッソリやればいいのさ」




サラに聞こえてないとでと思ってるのか声を小さくしてウィンクをするジェームズにルーピンはまた困ったように笑う




「ジェームズ、流石にそれは良くないと思うよ…」


「じぇ、ジェームズ…」



震えるピーターの声に振り向けば杖をこちらに向けたサラが…



『ポッター!全部聞こえてるわよ!』




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