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待ち合わせ5分前
駐車場に一台の黒塗りの車が入ってきた
その車は私の目の前で停車して運転席からはガタイのいいリーゼント頭の男がでてくる。
中学を卒業して高校、大学でも並盛風紀委員会を主体とした財団で活動を続けている事にも当時はびっくりしていたと言うのに卒業してからも恭弥と共にイタリアに飛んで、リーゼントまでそのままなんて…彼らの組織は一体どんな組織なのか
草壁さんに至っては中学の頃から今に至る迄ずっとどこに生えてるのかわからない草を咥えてる
その草の正体と風紀財団の正体、
この2つは前からの疑問、今更口にはしないけど。
「お久しぶりです、草壁さん」
「お久しぶりです、かりんさん」
私と草壁さんはきっちり90度のお辞儀をする
草壁さんは凄く礼儀正しいから私も気ちんとしないと行けないって気持ちになる
ま、彼だけじゃなくて風紀財団のみなさん…特に並中からの人達は礼儀作法がきっちりしてるんだけど
「お迎えありがとうございます。
でも流石に何度も通ってるから私一人でも行けるんだけど…」
「いえ、かりんさんの身に何かあったとなれば俺達の身が危ないのでこれからもよろしくお願いします」
そう言って頭を下げられてしまえば口を噤むしかない。
恭弥に怒られる=咬み殺されるって事な訳で、
私のせいで彼らが手加減を知らない恭弥の餌食になるのは気分が良くないもの
そしていつも通り草壁さんに誘導され車に乗り込んで風紀財団の支部だか本部だかよく分からない施設に入ってその一室に通される
「恭ちゃん」
この施設の主は立派な庭が併設されている和室で優雅に本を読んでいた
恭弥は恐ろしいくらい和服が、和が似合うと思う
「その呼び方はやめてって言ってるでしょ」
「けち」
「なんとでも」
私達は親戚で、その中で歳が近かったからか今でもこうして2人で会うくらいには仲がいい
群れるのが嫌い、と言い始める前から仲良くしていたお陰か側にいても咬み殺されることも無いし
彼は無駄に騒ぎ立てることもなく無言で居ても心地良くて、ただ穏やかな時間だけがすぎていくのが好きだからここにら度々通ってる
「この前日本に帰ったんだって?」
「うん、並中の同窓会にね出席したの
イタリアにいると友達と中々会えないから久しぶりに会えてすごく楽しかった」
そうそう恭弥にお土産があるんだよ、
並盛にいた時に恭弥がよく寄っていた老舗和菓子店の包を渡すと包を見て中身が何なのか理解した恭弥は目を猫のように細めて微笑んだ
「ここのお菓子好きだったでしょ?」
「気が利くね、有り難く頂くよ」
お茶の用意を、と言えばふすまのそばで控えていた草壁さんが畏まりました、と素早く外に出ていく
「…ねぇ、草壁さんって何?秘書?」
「草壁は風紀委員会の副委員長だ」
「それは知ってるんだけど、そうじゃなくて…」
今の役職を聞きたいんだけど…
彼はあの頃から並盛の見回りや不良の更生、その他委員のまとめまで幅広くこなしていたから
今も群れるのが嫌いな恭ちゃんの代わりに会議に出たり秘書や運転手や様々な役割を担ってるのかも
それは…とっても大変そう
だけどいいなあ草壁さん、何でもできそうだから私のところにも来てほしい
ヘッドハンティングしようかな
ぜひうちのアルダファミリーに就職しませんかってね。
▽
「うん、やっぱりここの和菓子はおいしいね」
「今度イタリアに出店するように掛け合ってみるよ」
「それは、やめといた方が…」
恭弥に掛け合われたら和菓子屋さんに与えられた選択肢は
→出店する
→出店する
しかないじゃない。
「ほら、あのおじいさんが作るから美味しいのであって他の人に技術を教えたってここまで美味しいものは食べられないよ」
イタリアに日本の和菓子はイマイチだって広まるのは本望じゃないでしょう?と恭弥がなんとか思いとどまるように諭す
息子がいるとは言え、和菓子を手作りしてる夫婦はもういいお年なんだから無茶はさせないでほしい。
今回はなんとか思いとどまったみたいだけど、そんな簡単に諦める恭弥じゃないからなあ
ふと気がついた頃にはイタリア支店が出来てそう。
▽
「本当に送らなくて大丈夫かい?」
「うん、ここら辺散歩してみたいと思ってたの
そんなに心配しなくとも迷子になんてならないよ」
「かりんのその言葉は信用出来ないな」