青い空、白い雲、吹き抜ける爽やかな風。今日もオリエンスはいい感じ!噴水広場の候補生の賑やかさ(話の内容は聞かないことに、軍人の姿は見なかったことにする)もあって朱雀はとっても平和っぽい。


「シンク、戦時中、それも戦況が悪化しているときに不謹慎ですよ」
うんうん、と思ったことを口にしていたら隣を歩くトレイにやれやれ、といった感じで口をはさまれた。
「えー、だって楽しいほうがいいじゃーん」
「いいですか。蒼龍までも敵対関係となった今、朱雀は平和ボケなどしていられる状況ではないのです。我々0組が朱雀の希望となって前線を切り開き未来を―――」
「いーよそーゆーの。シンクちゃんはマザーが頑張ったわねって言ってくれるだけで幸せだもん」
マザーが誉めてくれればいい。朱雀を護るとかそういうのは別にどうでもいい。マザーがやれと言うなら誰とでも戦うし、誰のことでも殺せる。朱雀のためじゃない。マザーのため。
「トレイだって同じでしょ〜?」
にっこり笑ってトレイを見上げれば「まぁ」とか「それはそうですけど」とかもごもご言ってた。やっぱりそうだよねぇ?
「マザーを愛し尊敬しているということも、マザーが我々を愛してくれているということも当たり前の事実です。そのマザーのために我々が存在している、というのも事実です」
うんうん。なんだか難しいことを言ってるけど、つまりマザーが大好きってことでしょ。
「しかしシンク。それでも考えを改めるべきところがありますよ」
「えー」
なんだか長くなりそうな予感。あんまり聞きたくないけど噴水広場に知り合いの顔もないし逃げられそうもない。それは避けたいんけどなぁ。
「いいですか。今私たちが所属しているこの朱雀という国が戦う相手は皇国だけではないのです。あの平和で穏健派揃いだったはずの蒼龍までもが敵になりました」
そう、それは知っている。そしてわたしたちが被った罪も……。
「私たちが蒼龍女王を暗殺した、という世間的な事実もあります。それが事実でないことを知っているのは―――」
「まーたトレイはどうしようにもないこと言うなぁ。それこそ蒼龍も白虎もわたしたちが倒すしかないんじゃないのー?」
そう。もう今さら事実なんてどうだっていいの。この先に待ち受けているものがなんであれ、マザーの望みを叶えるためにわたしたちがいるのだから。

トレイは何かまだ言いたそうにしてたけど「難しいことわからないもーん」と言ったら首を振って空を仰いでた。
「そんなことどうでもいいじゃん。敵を殺せばそれでいーの!」


「あなたは戦況を変えた事件をそんなに軽く考えているのですか!?」

わたしでもトレイでもない、別の誰かの声が響いた。



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