強がりたいんです


どんなに強がっていたとしても、泣きたくなることくらいあると思う。耐えきれなくて泣いてしまうことだってあると思う。

まさに今、そんな状況であったろうケイトに出くわしてしまった。一人で泣いていたんだろう。中庭の隅で小さく膝を抱え込んでいた。

「風邪引くぞ」
近くまで芝生を踏んで寄っていく。わざと大きな音をたてていたのに声をかけるとビクッと肩を跳ねさせる。
(気付かないのか……)
「な、によ。ほっといて」
震えた声でそう言われて、はいそうですかと放っておけるほど薄情ではない。
「強がりたいのはわかるが、一人で抱えなくてもいいんじゃないか」
そう言って隣に腰をおろす。無言のまま突き放すように肩を押されるが気にしない。別に何も話してくれなくてもいい。一人で泣いて欲しくはないだけだ。



どのくらいそうしていたか。だんだん風が冷たくなってきた。いくら春になったからといっても、やはり日が落ちてしまえば寒くなる。
「もうどっか行きなよ」
ようやく口を開くケイトは可愛くないことを言う。泣き止んだようだが、また一人にしたらどうだか……。
「オレがここに居くて居るんだ」
「アタシは頼んでない」
「オレの意思だからな」
ちらっと横を見ればうずめていた顔を上げていた。目は赤く腫れてしまっている。
「とりあえず人前で泣くのはガマンするんだよな。で、一人になると涙が勝手に出てくる。泣いてたなんて知られたくないからさ、人と会うときは何もしてませんって顔するんだ」
「なによ。別にアタシは……!」
「体験談」
突っ掛かってくるからサラリと言っておく。そうすればケイトは何も言わない。
「……エイトも、一人で泣いたの」
「まぁ、そんなときもあったさ」
「辛くなかった?」
「どうだったかな……」

とん、と肩が重くなる。膝を抱えたままのケイトがこちらに体重を預けていた。
「エイトがかわいそうだからね」
そう言うがきっと一人きりで辛いのは彼女も同じ。

「泣きたかったらオレのところに来い」って言いたかったけど、負けず嫌いな彼女はきっと来ないだろう。
だから泣いている彼女が隠れていてもオレが探してやろうと思う。






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