勉強どころじゃない


クラサメの授業ってほんとスパルタだよねー。ちょっと間違えたくらいでさ……と中庭に出たと同時にケイトが口を開く。それをデュースは困ったように聞いていた。
「隊長も私たちに学んで欲しいからこそですよ。ケイトさんにだけ厳しいわけではありませんし」
「あームカツク!まぁ、ナインとかに比べりゃ全然マシなんだけど。あーストレスだわ」
ぐったりするケイトに今の晴れた中庭は似合わない。いつも元気なのにこうも疲れた様子だと、見ているデュースも心が病んだ。気分転換も大事ですね、と口を開こうとした時、教室の扉が開く音がする。
「あーもう!頭パンクするよ〜。あ、ケイトにデュースだ、やっほ〜」
「ちょっとシンク……大丈夫?」
教室から出てきたシンクは顔が真っ青だった。室内からはナインの悲鳴が聞こえたような気がする。
「大丈夫じゃないよ〜。もうシンクちゃん死にそ」
「やっぱスパルタよね」
「……そう、ですね」
顔を真っ青にするシンクを見てケイトとデュースは顔を見合わせた。
「授業後のあの時間はやらない方がいいよ〜コワイから」
「げっ、頑張らないと」
「デュースは平気だろうね〜」
「え?あ、そうですね。あまり体験したくはないです……」
「大丈夫でしょ。あー次のテストやだなぁ」
クラサメの補講はどうやら厳しいらしい。授業はあんなに楽しいのに、とデュースは一人首を傾げた。



小テストの話がしばらく続くとシンクが唐突に手を打った。
「よし、じゃあ赤点回避しよー!トレイに教えてもらおうかなっ」
「えぇ!?トレイ話長いじゃん……クイーン厳しいし。あれじゃクラサメと変わんないよ。デュースが教えてよ!」
「えぇ!?あ、あの……次のところ私も苦手なんです」
ケイトの期待に満ちた瞳に罪悪感を感じうつむく。
「そうなの?あ、ならエースに教えてもらいなよ」
「いいね〜行ってきなよ〜」
「え、えぇ!?そんな、エースさんに悪いですし、自分で……」
二人からいいじゃん、行きなよと言われ顔が赤くなる。絶対からかわれてる、とデュースが息を大きく吸い込んだところへ別の声がする。
「僕がどうかしたか?」
「はうっ!え、いえ、なんでも……」
「ナイスタイミングだよー。次のテストのとこデュースが教えて欲しいって〜」
「そうそう!苦手なんだって!」
黙るデュースを押し退けてシンクとケイトがエースに言う。
「デュースが?それよりお前たちが……」
「トレイに教えてもらう〜」
「あ、えと……クイーンのとこ!」
じゃっ!と二人はバタバタと立ち去った。残されたデュースは慌てるしかなく顔はどんどん赤くなっていく。エーは立ち去る二人を見てそっとため息をついた。
「いえ、あの、その……」
「苦手だって?」
「あの、大丈夫ですよ。自分でできますし……そんな、教えてもらうなんて……」
ぶんぶん手を振るデュースになぜか罪悪感でいっぱいになるエースもその場に立ち尽くしてしまう。
「いや、僕も確認になるし……」
「いえ!本当に大丈夫ですから」
「そんなに嫌か?」
あまりにも二人になることを避けようとするデュースにエースは聞いてしまう。その表情を見てデュースも黙った。
「勉強くらい、なんでもないさ。ちょうど資料も持ってるんだ」
「嫌、じゃないです……」
「なら早くやろう。次回のテストは厳しいみたいだからな」
それだけ言ってエースはくるりと背中を向けてしまう。二人きりに緊張するのはデュースだけではない。落ち着こうとエースは一度大きく息を吸った。

「ありがとう、ございます」
「別に……」
中庭のちいさな机で勉強を始めたせいで結局どちらも集中などできずに、また日を改め場所を変えることにしたがその日がどうなったのかは誰も知らない。






「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -