世話のかかる弟


自由時間だし、何かしたいなーと思って魔導院内を歩きまわる。任務もない、授業もない、課題も報告書もない。こんな時間はなかなかないから無駄にしてしまうのはもったいない。
しかし僕が暇だからと、同じように時間をもて余している人は見付からない。
ナインとシンクは補講らしく(僕は今回平気だったんだよねー)エースはチョコボと出掛けたし、デュースとケイトとクイーンは買い物で、トレイには読書をすると断られた。サイスとキングは任務だし、マキナとレムは話があるとかなんとか。エイトは鍛練の時間にすると言うし(わざわざ今じゃなくてもねー?)セブンは後輩に捕まっていた。カルラは商売に忙しく、ナギはどこにもいない。ムツキはどうも僕には心を開いてくれないし、リィドやクオンは忙しいらしい。
「うーん…僕って寂しい人?あーあ、エイトと鍛練コースかなぁ」
せっかくの時間なら遊びたかったけど数時間待つべきかもしれない。

ふらふらして行き着いたのはクリスタリウム。思い出すのは読書をすると言っていたトレイだが、姿は見えなかった。
「うーん……」
「あれ、君0組だよね?暇そうだけど僕の研究手伝う気はないかい?」
どうしようか考えていると声を掛けられた。確かカヅサとかいう隊長の同期だった人だと思う。
「どんなことするのー?」
「そんなに難しいことじゃないよ。どう?0組の子なら大歓迎だよ」
そう言ってカヅサは本棚を動かした。隠された研究室らしい。この人の研究を手伝ったと言っていたのは誰だったか。詳しくは聞かなかったが、まぁ暇だったから丁度いいだろう。
「うん、いいよー」
「そうかい?助かったよ。あんまり最近は手伝ってくれる子いなくてね」
……ん?なんで最近はいないんだろ。
まぁいっか。あまり深く考えずに研究室へ入ろうとしたら急に肩を掴まれた。
「ジャック!お前何してるんだ」
「え?あれーセブン。どうしたのー?」
どうしてセブンが。後輩とサロンにいなかったっけ?
「どうしたもこうしたもあるか。お前がカヅサと話していると聞いて慌てて来たんだ。何手伝いしようとしてるんだまったく」
よく見れば息切れしているセブン。何を言っているか、より急いで来てくれたということで頭がいっぱいになった。
カヅサとセブンが何か話して「じゃあまた時間のあるときに。待ってるよ」とかなんとか言われてクリスタリウムを出て教室にいた。
僕はといえば、ぼんやりセブンに手を引かれるまま歩いていただけだ。


「ジャック、前にカヅサの研究対象にされて大変だったと話しただろう」
「あれ、セブンだったっけ」
「他にもいるが…とにかくあいつには関わらない方がいいとクラサメも言っていただろ。なのに研究室に入っていくから肝が冷えたよ」
腕を組んでため息をつくセブンは怒っているようで。
「ごめん、聞いてなかったや。わざわざ来てくれてありがと」
あまりふざけると余計怒らせそうだったから素直に謝った。それ以上セブンも何も言わず窓の方を見ていた。何か言いたかったけど、なんて言えばいいかわからず僕も同じように窓の方を見た。



「どうしてクリスタリウムにいたんだ?」
どのくらい黙っていたかわからないけど、セブンが突然口を開いた。
「んー、暇だったからふらふらしてただけー」
「そうか。まったく検討違いだったよ」
「もしかして、僕のこと探してた?」
「ん?ああ。私のところへ来てただろ。用事があったんじゃないのか?」
サロンでセブンに声を掛けようとしたこと気付いてたんだ。
「用事が……じゃなくて、セブンひまー?どっか行こうよー」
「そんなことか。いいよ、もう用事は済んだし」
そう言って歩き始めた。
「どこへ行くんだ?」
「んー、デートしようよ。それっぽいとこ」
「なんだそれ」
そう笑うセブンは一度だけまだ歩き出さない僕を振り返って「置いてくぞ」と言った。
慌てて追いかけてさっきされたようにセブンの手を引いて歩く。少し驚いたみたいだけど、振り払われたりはしなかった。
「デートっぽいよね、こうした方が」
「そんなにデートしたかったのか?わざわざ私と手を繋いで歩くことないだろ」
さらりと言われてしまった。わざわざセブンだからデートって言ってるのに。
「デートしたい相手じゃなきゃしないよー。僕セブンが好きだもん」
「ジャック、それはわかったが……まあいい」
冗談だと思われているか、親愛だと思われているか。
「他のやつに軽々しく言うなよ」
「えー?妬いてくれるのー?」
「……勘違いされるぞって警告だ」
だから言わないって。セブンにしか言わないし、デートだってしない。
「弟に泣かされる女の子が後を絶たない、なんて困るからな」
「……お世話かけるねー」
棒読みになった。少し期待したかったのにただの弟扱い。まぁ、しばらくはお姉さんに甘えておこう。






「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -