無自覚に羨ましい


イヤなものを見た。
空き時間に気分転換でもしようと思ってテラスに出たらエイトがいた。
別にそれはいいんだけど、エイトの横にはアタシと同じ制服を着て、別の色のマントをした小さくて可愛い女の子がいた。その子はふわふわな長い髪で色白い肌をして優しそうに笑っていた。その子が顔を赤くして何かをエイトに渡すとがばっと頭を下げてアタシの横を駆け抜けてテラスを出ていった。
エイトはその場でもらった物を見つめると困ったように頭をかいてた。

ここまで見てアタシはそっとテラスを離れた。それより先を黙って見ていられそうもなかった。


「あーゆー子が好きなのかなぁ」
誰もいない教室でぼんやりしてたらつい口に出してた。ふわふわした小さくて可愛らしい女の子。あの子とアタシは正反対だと思う。
「って!なに考えてんのやめやめ」
別にエイトが何を好きだっていいじゃないの。
「そうそう!あんなチビで生意気でなに考えてるかわかんなくて、ムカつくやつで……」
悪口をまくし立ててみたけどそれ以上続かなかった。
「……努力家だし、頼りになるし、見た目もそんなに悪くない、チビだけど」
「最後は余計だ」
「うわっ!?」
言葉にしてみたらなんだいいやつじゃん、なんて思ってたら本人がいた。
……いつからいたの?

「な、なん、なんで……」
「別に、ただ教室で勉強しようと思ったらお前がぶつくさ言ってただけだ」
「き、聞いてたの!?」
「チビで悪かったな」
どうやら聞いてたのはその部分だけらしい。そんなに大声じゃなかったし聞こえなかったのかも。



「返事、どうするの?」
「は?」
「手紙の返事ー!可愛い女の子からもらってたでしょ」
聞くつもりなんてなかったのに気付いたら聞いてた。エイトはぽかんとしてる。
「テラスでもらったやつ!」
「あぁ、見てたのか。オレは別にどうにも」
「いいじゃない!可愛い子だったし、きっと性格だって素直でいい子だと思うけどな」
そう、アタシと正反対でエイトにお似合い。
「ケイト何か勘違いしてないか」
「してないわよ。よかったじゃないのいい子に惚れてもらえて」
ふい、と顔を反らしてやったらエイトは困ったような顔をして近付いてきた。
「あの手紙な、」
「いいよ別に。聞きたくない」
「いいから聞けって。あれはセブン宛てだ」
「だからいいって……え?」
なんかアヤシイ展開。アタシの早とちり、ってこと?エイトはおかしそうに肩を震わせてる。
「オレ宛てじゃないんだよ。安心したか?」
「は、はぁ!?それこそ関係ないじゃない!残念だったね!」
「そうでもないさ」
ガマンできなかったのかクスクス笑うエイトが腹立たしい。
「エイトのばか!ちび!」
「な、だから最後のは余計だ!」
腹立たしいから思いっきり悪態をついたら、なんだかアタシもおかしくなって結局二人で笑ってた。

こうやってばかみたいに笑いあえるのっていいじゃん。きっとあの可愛らしい女の子じゃこんな風に悪態つきあって笑えないもん。






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