ふぁっしょんせんす


ミリテス皇国の中心地がイングラム。そこにあたしの自室も用意してもらっている。警備も厳重で関係者以外立ち入り禁止。侵入者がいれば直ちに排除される……ハズなんだけど。
「最悪。なんであんたがいるんだ」
自室へ戻れば本来いるハズのない人間が……正しくは人間ではないが、まぁ細かいことはどうでもいい。そいつは堂々と部屋のソファに腰掛けていやがった。
「待ちくたびれたぞ小娘」
あたしを見るなりこの台詞。朱のルシがここにいるのはおかしい。第一どうやってここへ入った?なぜ誰も気付かない?これから朱雀へ奇襲をかけようというときにこいつがここにいるってダメだろ。
「クリスタルの意思だ。細かいことは気にするな」
「はぁ!?今白虎と朱雀は同盟国じゃないし、あたしもお前もそれぞれの国の乙型ルシなんだ。それをどうのって……」
「喚くな。私はどうしても尋ねたいことがあって来た。今ここで何かするつもりはない」
無感情な瞳をこちらに向けた朱のルシは本当になにもする気がないのか。ニンブスも相当だがこいつはもっとヤバイ。何も感じさせないその表情に、雰囲気に従うしかなかった。
「とっとと用件済ませて帰りなよ。朱雀ルシセツナ、だろ?ほんと最悪……」
「そうだな……」
無感情なこいつの聞きたいことなんて想像しようがない。クリスタルに従うことしか頭にないのなら聞きたいことってのもその意思なのか。こちらの戦力を晒すわけにはいかない。その類いのことならあたしが殺るしかない。ルシの力を使えば誰かが気付くだろう。


「シュユがな、幾年も前の制服を身に纏ったまま過ごしているのが気になってな」
「………」
はい?装備の話、か?
「想いを忘却の彼方へと置いてきたくないと願ったらしいが、私にはわからぬ」
「あー……そう」
「候補生の証として朱雀ではマントを身に付けるが、その色も褪せ原色はわからぬ」
「……うん」
一体何が目的で敵地に一人で乗り込んできたのかまったくわからない。最古のルシともなると感覚も違ってくるから仕方ないのか、なんなのか……。
「白虎の甲型ルシも古くからいたな。それについてはどう考える?」
「ニンブスの……服装?」
ほんとわからない。こいつ頭おかしい。何?目的は甲型ルシの服装についてだったのか?
「ニンブスのことは……よく知らない。服なんてじっくり見たことない、けど支給品なんだと思います」
ワケわからないから口調までおかしくなった。最悪!こいつなんなの!?
「そうか……動きにくくはないのか?」
「土地柄吹雪ばっかだし……」
何が目的だ?ニンブスの弱点を探りにきたのか?あたしだってあいつのことなんて知らねぇよ。
「……ださい、ということばが似合うのか?」
「はい?」
ださい?何が?ニンブスが?
「シュユも言われていた。戦乱の世でなければ平和であった。ルシを特別視することもなかった」
「そう、ですか……」
そんな昔に聞いた甲型ルシの服装がださいとかそんなことを確かめに来たのか?
「娘、私には無い感覚だがお前にはわかるのだろう?」
「あー、……決してかっこよくはない、ってことで」
あたしの返事で満足したのかどうか。よくわからないが朱のルシは立ち上がった。
「そうか。やはりそれも定めか」
わけわからないことを呟き窓の方へ歩みそのまま落ちていった。
「はぁ!?な、何してんだっ」
慌てて駆け寄れば目映い光と見慣れないモンスター。
「はは……最悪」
サモナーとか言ったっけ。よくあれで見付からなかったな。






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