「理一ー侘助ー!今日は何の日だー!」

侘助が陣内家に来て、3年目の夏休み。納屋で本を読んでいる侘助を無理矢理居間に連れて来て、先に座っておくように言った理一の隣に座らせた。

「ねえ、宿題やらなくていいの?」

理一がまるっきり質問を無視して、痛い所をついてきた。侘助は俯いて何を考えているか分からないけど、とりあえず2人は早く元の作業に戻りたいというのが見てとれる。これじゃあらちが明かないと仕方無しに、自ら答えを言った。

「今日はねー私たちの記念すべき日だよ!じゃーんタイムカプセル!」

隠し持っていた鉄で出来た長細い箱を掲げる。理一も侘助も目線を箱に向けたが、まだ状況を読み込めていないらしい。大袈裟にため息をついて、再び説明する。

「これにねそれぞれ大切な物と未来の自分に書いた手紙を入れて埋めるの。それでまた大人になったら3人で一緒に開ける!どういい計画でしょ?」

「大人って…いつ開けるの?」

考えていなかった事を突っ込まれ、稚拙な脳を一生懸命活動させ考える。

「えーと、私が思い出して3人が一緒にいた時かな。あ、二十歳までは絶対開けないって事で」

「適当過ぎない?」

「いーのいーの!さ、とっとと入れよう。紙と鉛筆はあるからね」


箱を開けると、理一は仕方ないなあと言いながら立ち上がった。きっと入れる物をとってくるのだろう。なんだ、割りと乗り気じゃない、と私は嬉しくなった。だけど、一方の侘助は動こうとしない。

「侘助?何か入れる物を持ってきなよ」
「…俺はしない」

子供とは思えない程の冷たさを含んだ言い方に怯む。折角最近仲良くなれてきたと思っていたのに。

「どうして?一緒にやろうよ!ほらほら早く!」

明るい声をわざと出して立ち上がらせようと、侘助の手をとる。だが、跳ね除けられてしまった。そして怒りと少しの哀しみを帯びた眼差しを向けられる。彼は唸るように吠えた。

「そういう気遣いとかいらねえんだよ!俺に構うな!」

「私はただ3人で、思い出を作りたいだけだよ。気遣いなんてしてない。だって家族に気遣いなんて必要ないでしょ?」

家族、私の言葉に侘助は顔を歪めた。違う、そんな顔をさせたいんじゃない。

「家族なんて思ってないくせに!お前の自己満足に付き合ってられるか!俺は…上っ面の家族なんていらない!」

自己満足なのだろうか、混乱し過ぎて分からなくなる。どうして分かってくれないんだろう。私はもっと仲良くなりたくて、

世界が滲む。頬が湿っているのを感じた。ぼやけた世界で侘助がしまったという顔をした。泣き止まなきゃ、こんな場面を大人が見たらまた侘助が悪く言われるに決まっている。こぼれる涙を必死に拭うけど、止まってはくれない。

「2人とも何してるの?」

廊下を見ると、紙飛行機を片手に立っている理一がいた。

「わ、侘助は悪くないの、私が悪いの」

「そうなの?」

理一は侘助に目を向け尋ねる。侘助はバツが悪そうに目を反らし、吐き捨てるように言った。

「こいつが、家族なんて思ってないくせに家族って言うから」

「え、俺たち家族でしょ?いとこでしょ?」

さらりと言い、侘助は目を見開いた。私は、今だと思い畳み掛けるように言う。

「そうだよ、家族だよ。大人が言うことなんて関係ないよ、私たちは子供だもん。それに同い年だし…だから仲良くしたいって思うのは悪い事なの?」

「ほら泣かない。侘助がどう思っていようが、俺たちは家族。はい、仲直り」

理一が微笑みながら私の手と侘助の手をとってくっつけた。私が握ると、侘助は遠慮がちにそっと握り返してくれた。それが嬉しくて嬉しくて、またちょっと泣いてしまった。


「どこに埋めるの?」
「千年樹の神様の前!あそこは絶対なくならないし、あと…」
「あと?」
「やっぱ最後のは秘密ー!開けた時言うよ」
「何それ」

私達は大きい声で笑い合った。私と侘助は半泣きで、理一はとても楽しそうで。


「よし帰ろう!」
「俺スイカ食べたいなあ」
「あ、私も!侘助は?」
「うん食べたい」
「帰ったらお母さんに頼もう」

3人仲良く手を繋いで足を進める。離れないように強く、そして壊れないように優しく。

いつ開けるか分からない、もしかしたら仲が悪くなって開けないかもしれない。だから大人になっても私達が家族で、いい友達である事を願う。

でもきっと大丈夫、千年樹の神様は家族の神様だから。遠ざかる中私は思った。

神様はいま肺の中



あおちゃん遅くなってごめんなさい!
そしてなんか暗くなってごめんなさい/(^q^)\
リクエストありがとうございました(^O^)
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