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心も体も俺のモノ


「おはよー!」

ガラリと開かれた万事屋の扉から現れた八雲は靴を脱ぐと、家主の返事も待たずにズカズカと廊下に歩みを進める。

「…おー」
「鼻ほじってる…」

眠そうな目でこちらを見た銀時の鼻には第一関節までズッポリ差し込まれた小指。
それを見た八雲はしらけ顔で見たままを呟いた。

「追いかけすぎると鼻血出るよ」
「もー…ちょい」

痛ぇ!という声と一緒に抜かれた小指が赤く染まっている。
言ってる矢先から鼻血を垂らしている彼へ軽蔑の眼差しを送った。

「言わんこっちゃない」
「うるせー、俺の穴だどうするも勝手だろ!」

ティッシュを鼻にねじ込むと腕を組みコチラに向き直る。

「んで?今日はどうした。」
「一緒に出かける約束だったじゃない!」

今度は八雲が声を荒げる番だった。
その勢いに銀時はしまった、と口元を歪めると露骨な作り笑いを浮かべて近付いてくる。

「いやーー晴れて良かった」
「忘れてたでしょ」

向かい合わせに立った彼の頬に手を伸ばすとそのまま抓ってやった。
考えなくとも粧し込んだ姿の八雲を見れば感の鈍いヤツでも分かるであろう状況に少し前の自分を呪う。
パチンと引き放された頬を摩りながら光る物が目に入りその正体を追ってみる。

「…あれお前」

髪の毛の隙間からキラリと輝くそれは耳たぶに張り付いている。
前から金具が見えないのでピアスだろうか、と銀時は考える。

「気がついた?」
「ピアス穴開けたのか?」

髪の毛を人差し指で避けマジマジと見つめられた。
トーンの下がった声で聞かれ好みではなかったかな等と思ってしまう辺り、八雲も相当銀時に惚れ込んでしまっているのかもしれない。

「可愛いくない?嫌いだった?」
「穴開けたのかって聞いてんだ。」

先程より真剣味を帯びた目でそう聞かれ、悪い事でもしたかのような微妙な感覚に陥る。
八雲は恐る恐る耳たぶに指をやりアクセサリーを取った。

「磁石」
「へ?」
「ピアスに見える磁石イヤリング」
「…なんだよ脅かしやがって!」

キョトンとする八雲を銀時は急に抱き締めソファに一緒に腰掛けた。
耳たぶを指で弄り穴が無い事を確認すると深くため息をつく。

「なんかごめん…」

顔を胸板に押しつけられたまま八雲は謝ると、銀時はもう一度ため息をついた。

「いや…開けたきゃ開けてもいいんだけどよ、なんか自傷行為みたいというか、傷つけて欲しくなかっただけだ。」

そう言うと銀時は深く抱き締め八雲の髪の毛に鼻を埋める。

「止めたりしねーから開ける時はひと言くれな」
「銀ちゃんが躊躇ったり嫌がることはしない」

八雲も銀時の背中に手を回すと、頭上から鼻にかかった嬉しそうな笑い声が聞こえた。

「今日なんか買ってやる」
「ほんと!?」
「…あんま高いのはナシな」

ずっと鼻を塞いでいたティッシュを取り除くと丁度鼻血も止まったようだ。
2人は笑い合うと触れるだけの優しいキスをした。



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