乙女ゲーム | ナノ

君の温もり


「お待たせしました!」
「あぁ、じゃあ行くとするか」

今日はケントさんとお買い物
無事に留学が決まった私たちは、ロンドンでの生活に向けて生活用品をそろえることになった
一人じゃ悩んでなかなか買えないから、ケントさんがいると心強い

「まずは日用品だな。日本製品はなかなか買えないから、多めに買っておこう」
「そうですね。ショッピングモールにでも行きますか?」
「うむ。そうするとするか」

季節は夏を過ぎて秋
風がとても気持ちいい
並木道は綺麗な紅葉で彩られている

「紅葉綺麗ですね」
「あぁ、日本は四季がはっきり分かれるから景色が美しいな」
「じっくり見ておかないと!もう滅多に見られなくなりますから」
「そんなことはないだろう。写真ならいくらでも見れる」
「うーん。そういうことじゃないんですよ」
「そうか。よくわからないな」

昔なら意見が違ったらすぐ喧嘩してた
けど恋人になってからは、互の意見も尊重できるようになった
今ならケントさんの考え方も理解しようと思う
きっとケントさんも同じことを考えてくれてる

「これなんかどうですか?」
「君に似合うとは思うが、まさかこれを持っていくのか」
「ダメですか?デジカメ」
「駄目ではないが…旅行に行くんじゃないんだぞ」

ここは電化製品売り場
やっぱり見知らぬ土地に行くのだから、カメラは欲しい
と思ったのだけど、確かに留学には必要ないかな…

「でもヨーロッパなんて行ったことないので、写真撮りたいです」
「使い捨てカメラなら向こうで買える。それに…」
「それに?」
「留学が終わったら、海外とまではいかないが、旅行になら行けるだろう。…その…私も一緒にだが」
「…はい!」
「い、行くぞ」

私の手をとって歩き出す
ケントさん、今はきっと照れてる
歩くの早いし、目線が斜め上だから

(幸せだなぁ…)

***

「今日はありがとうございました」
「いや、自分のものを買えたから、お互い様だ」
「次会うのは…向こうですね」

夕方
買い物を終えた私たちは帰路につく
ケントさんは一足先にロンドンへ旅立つ
私はひと月遅れて向かう予定だ

「そうだな。英会話の勉強を怠ってはいけないぞ」
「わ、わかってます!でも…やっぱり寂しいです」
「…私もだ。だが君のことだから、メールや電話をしてくれるのだろう?」
「もちろんです!毎日します!」

一ヶ月の月日は短いようで長い
空港に見送りにいけない私は、彼から離れにくかった
大学で重要な試験があるからだ

「小春」
「……っ」

私たちは自然と互いに抱きしめ合った
やっぱり寂しい
この温もりは一ヶ月お預けだ

「昼間、私が言ったことを覚えているか?」
「昼間…あ、紅葉のことですか」
「そうだ。私は紅葉なら写真で見れると、そう言った。けれど今日考えたんだ。君と会って話をする。笑顔を見る。こんな体験は写真なんかでは伝わらない…とな」
「わかってくれましたか?私のこと」
「ああ、百聞は一見に如かずとはこのことだな。今こうして君の温もりを感じるのも、すべて君という存在が私の腕の中にあるからだ」
「ケントさん」
「なんだ?」
「私、ずっとケントさんのそばにいますから。離さないでくださいね」
「あぁ、もちろんだ。約束しよう」
「…愛してます」
「私もだ。愛してる小春」


彼は驚いたように目を開いた後、
優しく笑ってこう言った



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