Touch my heart

ある日の放課後

『あ、またポンタ買ってる』
「いいじゃん。美味いんだよ」
『ふーん…』
「炭酸飲めないなんて、まだまだだね」
『飲めないんじゃなくて、飲まないの!』

同級生のリョーマくんは、ポンタがお好き
特にグレープ味が大好きみたい
炭酸が苦手な私は、いつもお茶かフルーツジュース
もちろんコーラも飲めないし、飲まない
理由は口が痛くなるから
あのパチパチ感が痛い

『でも炭酸って太るらしいから、別にいいかなって』
「俺は太ってないよ」
『それは男子だからでしょ。いいな〜男子』
「なんで」
『だっていくら食べても太らないし。羨ましいよ』

いつも思う
甘いものを食べてる時も、飲んでる時も
体重やカロリーが気になって仕方ない
その点男子はガツガツ食べてて、羨ましい

「…俺はあんたが女子で良かったと思うけど」
『えー、どうして?』
「言わなきゃわかんないの?」
『…うーん』

私どんくさいし、頭は良くないし…
可愛くないし、足遅いし…
考えれば考えるほど、答えがでない
というか考えてて切なくなってきた…

「今の顔、鏡で見たほうがいいと思うよ」
『ちょっと。せっかく一生懸命に考えてるのに』
「ま、そのうちわかるんじゃない」
『そんなぁ…。ポンタ飲めばわかるかな』
「飲んでみる?」
『イヤです』
「……」

やっぱり痛いのは嫌だな
でもリョーマくんが飲んでると美味しそうとか思っちゃう

「おまえさ、俺のことどう思ってる」
『リョーマくんのこと?』
「そう」
『好き…だよね』
「!?」
『ポンタが』
「……(そういう意味かよ)」

なんだか今日はリョーマくんがいつになくおしゃべりだ
クールじゃない場面も見れて嬉しかったりする

『じゃあ逆に、私のことはどう思ってるの?』
「なんだよそれ」
『ちょっと気になったから』
「秘密」
『ど、どういうこと!?』

言えないってことは…
き、きらいとか?
本当はこうして話してるのもイヤとか?

『しっ、失礼しました!』
「あっ! おい!!」

背中を向けて走り出す
知らなかった…実は嫌われてたなんて…!!

「待ってよ!」
『来るのはやっ!!』

もう目の前にいるリョーマくん
さすが運動部なだけあるなぁ
って感心してる場合じゃない

「嫌いじゃないから」
『…?』
「あんたのこと。嫌いじゃないから」
『そう…なの?嘘ついてない?』
「ついてない。多分」
『多分!?』

とにかく嫌われてはいないみたい
秘密なんて言うから、紛らわしいよ

『ちゃんと答えてよ』
「…その前に、ききたいんだけど」
『はい、どうぞ』
「どうも。俺がポンタ飲んでるとき、俺のこと見てるじゃん。いつも」
『うん。見てます』
「なんで?それってさ、俺のこと少しは…」
『美味しそうだからね、ポンタ』
「……は?」
『リョーマくんが飲んでると美味しそうだなって。思っちゃうんだよね』
「……(ややこしいんだよ)」

あからさまに肩を落としている
何て答えるのが正解だったのかな
君しか見えてないよ!みたいな感じ?
でもそれは逆に引かれる可能性が…

「あんたがポンタ飲んでくれたら答えてやるよ。さっきの質問」
『そんなの不公平だよ〜』
「いいから。ちょうどここに一本あるし」

ポケットから取り出すリョーマくん
用意周到なことで…

「はい」
『…うぅー』

にらめっこがはじまる
そもそもどうしてこうなった
私は答えてもらう側なのに
いっそのこと逃げる?
でもまた追いつかれること間違いなしだよね

「はやくしなよ。日が暮れる」
『待って、覚悟決めるから』
「…ふーん。俺は決まってるけどね。覚悟なんか前から」
『……え?』

前から決まってるって、どういう…
私の手から缶を奪って、彼は自分で飲んだ
なんだ、結局飲みたかっただけなの?
そう思った瞬間



……ちゅっ


唇に何かが触れた
あったかくて、柔らかい
これ、なに?

「……」
『……!!!!』

キス…された?
目の前に綺麗な瞳がある
鏡とかじゃない
さっきまで話をしていた彼の顔が目の前にあった

「…好きだ。小春」
『……っ!?』

まさかキスされるなんて…!!
それにこれって…私に対してだよね!?
言葉が出ない…
なんて答えればいいのかわからないよ…!

「俺のこと、男として見てよ」
『…い、いきなりどうしたの』

そうだよ
今までそんなこと一回も言ってなかった
全国大会で優勝した時も、一緒に喜んで、笑いあって…
でもそれは、友達としてで…

「全国大会で優勝したら、言おうと思ってた」
『……でも』
「小春が俺のことそういう目で見てないのはわかってる。答えは出さなくていいよ。いつか言わせるから。俺のことが好きって」

「覚悟しときなよ」


『…うん』

口の中が痛いはずなのに、
炭酸は苦手なはずなのに
甘い、美味しいと感じてしまったのは何故だろう
胸の鼓動が加速する
どうしよう、どうしよう

「…I think very tenderly of you.」
『え、なんて言ったの』
「俺のこと好きって言ったら答える」
『…もう!』

動き出した、私のキモチ
もう、止まらない


fin.
------------------------------

Touch my heart
想いよ届け

I think very tenderly of you .
君のことがたまらなく愛しい


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -