窓越しの君。

図書委員の私は、本が好きだ
放課後にはよく図書室に行って本を読む
読むことが好きなのに加えて、図書室っていう空間が好きなのもある
高校に入学して数日後

私は窓から、彼をみつけた

おどおどしてて、あぶなっかしい
どうやら、アメフト部の練習に加わってるみたいだ
最初は仕方なくという感じで続けていた練習も、次第に積極的に参加していく
足も速くなり、テクニックも身につけ始めた
そのころには私は、窓から彼を眺めるのがクセになっていた
名前も知らない、声も聞いたことがない、21という背番号をつけた彼を私は応援していたようだ

キミならできる
キミなら勝てる

がんばれ、がんばれ!


***

それはある日の放課後
いつもは真っ先にグラウンドで練習してる彼が、一向に現れない
珍しいこともある
そういえば最近、メンバーが増えてきたみたいだ
今度学校で試合をするんだとか

(見学行こうかな…)

読んでいる小説を閉じて、
手にとったのは一冊の月刊アメフト雑誌
学校が毎月購入しているらしく、私もよく目にする
《名プレイヤー特集》
知らない人ばかり載っている写真と文章
中でも進清十郎という選手は大々的にとりあげられていた

ガラガラッ

そのとき
図書室の扉がゆっくり開いた

「(……あ!)」

入ってきたのは、アメフト部の彼だった
意外と背が小さいというのが第一印象
キョロキョロと何かを探している
ふと、私を見ると視線が止まった

「あ、あの〜」
「はい、貸し出しですか?」

これでも図書委員のため、仕事はこなしている
放課後のお客さんは珍しいけれど

「それなんですけど、読みますか?」
「これ?」

このアメフト雑誌を借りにきたらしい
私はいつでも読めるから、と彼に差し出す
安堵しながら、胸をなで下ろしている
命でもかかっていたように
(実際、かかっていたらしい)

「いつもいるんだね。図書室に」
「図書委員だから。何でそれを?」
「グラウンドから見えるんだ。君がいつも図書室にいるの。俺アメフト部だから」

彼も私を見てくれてたらしい
ちょっと頬が赤くなる

「私も…」
「え?」
「私も見えるんだ。キミのこと。頑張ってるのよくみてるよ」
「そ、そうなんだ!?」

互いに顔を赤くして、うつむく
私たちって似たもの同士なのかも

「応援してるね、アイシールド21さん」
「バレてる…ヒル魔さんに殺されるよぉ(泣)」
「ふふ、誰にも言わないよ?」
「うん…ありがとう!俺は小早川瀬那。君の名前…教えてもらっていいかな」
「美空小春です。よろしく」

にっこりと笑いあう

ピリリリッ

電話の音が鳴り響く
彼のポケットからだ

「ちょっとゴメン」

ピッ

「…え?そんな!ひぃぃぃっ!!!」

みるみるうちに顔色が変わっていく
部活の人だろうか

「俺行くね!?爆破されちゃうから…」
「(爆破?)」
「じゃあまた!!」

風のように彼は図書室から姿を消した
もう少し話したかったけど、残念…
でもそれから放課後、よく目が合うようになった

今日も楽しそうに、彼はアメフトをしている

きっと明日も、明後日も

私もきっと彼を見ているのだろう

明日も、明後日も


この距離が少しでも縮まりますように
気づけば私はそんな願いを持っていた


fin.

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -