04


「安いよ安いよー!」

(ここがスーパー!思ってたより狭くて物がいっぱいあるみたい。日用品まで売ってる!)

「スーパーは初めてか?」
「(はい!物がいっぱいありますね!)」

三人は近くのスーパーにやってきた。サイタマは事前にチェックしてあったチラシを見ながら、何を買うかを考えている

「さて、まずは卵だな」
「(そういえば、私は外に出て良かったんでしょうか)」
「大丈夫だろう。先生はお強いからな」

協会の情報によると、サイタマのランクはC級、ジェノスのランクはS級のはずだ。そのジェノスがサイタマを先生と呼ぶからには、やはり彼は強いのだろう

「おいジェノス!お前は牛肉担当な。俺とコハルは卵に行く」
「了解しました」
「(はい)」

ジェノスは牛肉コーナー目掛けて走って行った。彼も一部が人間のサイボーグ。食事もするし、風呂も入るのだ。一方サイタマたちは卵コーナーに向かっていた

「お、今日はいっぱいあるな。2パック買うか」
「(いつもよりどのくらい安いんですか)」
「そうだなぁ、二倍くらい違うかもな。俺の家計はかなりセールで助かってるぜ」

二倍とはまた随分と違ってるものだ。買い物をしたことない彼女は、物価平均がわかりにくい。一般的な知識もこれから学んでいかなければと、静かに意気込んだ

「先生ー」
「牛肉あったか」
「結構安かったですよ。三人分なので少し多めに持ってきました」
「よし、じゃあ帰って早速すき焼きだな」
「(晩御飯ってすき焼きだったんですか)」
「珍しいですね」
「すき焼き食うとやる気が違うよな」
「なるほど、強さの秘訣はすき焼きにありっと…」
「すき焼きにそんなパワーはねえよ。っていうかノートをしまえ」

(熱心だなぁ、ジェノスくん…)

ジェノスはサイタマの弟子になってからというもの、毎日日記という名のサイタマ観察日記を書いている。常に書きこぼしがないよう、彼は日記を持ち歩いていた

「(サイタマさん、白菜はいりませんか)」
「おー、そうだな。よしジェノス、白菜」
「はい先生!」

ジェノスは光の速さで白菜を取りに向かった。まるで飼い慣らした犬のようである。本人は満更でもなさそうだ。こうして彼らのカゴには次々と鍋の材料が入れられていった

「ふー、買った買った」
「今夜は豪勢ですね」
「(そうなんですか?)」
「ジェノス、余計なこと言うなよ。格好がつかないだろ。25歳として」
「先生、働いていない時点で格好はついてないです」
「それは言わない約束だ」

何だか懐かしい感じがすると彼女は考えた。遠い昔、まだ声があった頃に誰かとこんな風に買い物に出かけた気がした。きっとそれは家族。顔も知らない彼女の家族だ

(早く思い出して、お父さんとお母さんのお墓参りに行きたいな。私は元気だよって伝えたい…)

「コハル」

うつむいていると、名前を呼ばれた

「お前はすき焼きは卵派か?それともポン酢派か?」

彼の問いは、彼にとって取るに足らないものだっただろう。しかしコハルにとって、彼女の過去を詮索しようとしない問いは何より嬉しいものだった。過去に関係なく、今の自分を見てくれている気がして。

コハルはゆっくりとタブレットに文字を打ち込み、前にかざす


「(私は卵とポン酢のミックス派です)」








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