08
「よっしゃー!今日も絶好調やったな白石ぃ!」
「あぁ、みんなええ感じやったで」
「財前はんも見事やった」
「どうも。先輩方は相変わらずでしたね」
「相変わらず小春とラブラブやったって?照れるなぁ」
「もう!財前くんたら妬かないの!」
「妬いてないですわ」
今日も我が四天宝寺中学は快勝した。練習試合とはいえ、相手は奈良の強豪校。ちょっと心配してたけど、いつもみたいに皆は楽しそうにプレイしていた
「忍足くん残念だったね、出番なくて」
「ま、たまにはええやろ。夏の大会まで温存しとくわ」
「おう、期待してるで謙也」
「お前誰に言うてるんや?」
「浪速のスピードスター様、だよね」
「ふふん、わかっとるやないか美空」
今日は負けなしだったため、シングルス1だった忍足くんは出番が回ってこなかった。やる気に満ち溢れてたから、試合を見れなかったのは残念。次の公式戦は夏の地区大会しかないので、みんな全国大会に向けて頑張っている
「電車乗るんは久しぶりやなぁ」
「学校はみんな自転車か徒歩だからね」
奈良の学校から大阪へは電車で帰る。大阪では電車やバスに乗る機会が多いのでみんなSuicaを常備済みだ。私が改札を通ろうとしたとき、
ピロロロロロロ♪
携帯の着信音が鳴った
「ちょっと電話してくるね」
「先輩電車来ちゃいますよ」
「急ぐ!先に行ってて」
慌てて通話ボタンを押すと、相手はお母さんだった
「もしもし?」
「はるちゃん?お母さんだけど」
「うん。なに?」
「お父さんが白石くんに今度の土曜日に家に来れるかきいておいてって」
「あ、じゃあ手に入ったんだ」
「そうみたい。もう子供みたいに喜んでてねー」
「楽しみにしてたもんね。わかった、きいとくよ」
《まもなく、四番線に電車が参ります》
私たちが乗る電車のアナウンスがなる。ちょっと長話しすぎた!お母さんに軽く挨拶をして、私はホームに向かって走った
「(やばい!間に合わないかも)」」
みんなはもう電車に乗っただろうか。ひたすら走って走って、ようやく乗る電車が見えてきた。電車までは長い階段を上って、さらに下らなければいけない
「はるー!はよせえ!」
電車のドアの前にしろちゃんがいる。出発まであと数分だ。けど私の体力だとそろそろ限界…!
「美空!つかまれ!」
「ほぇ!?」
もう駄目だと思ったその時。電車の方向から忍足くんが走ってきて、私を抱えた。すると電車に向かって再び走り出す
「飛ばすでぇぇえ!」
「うぇぇえ!!」
はやい!忍足くんの腕の中で風を斬る。すごい、速すぎて世界が変わって見えるくらい!だてに脚の速さを武器にしてない!
「白石ぃ!」
階段から降りるとき、忍足くんが白石くんを呼んだ。気のせいか腕に力を込められているような…
「おい謙也!何する気や!」
「しっかりキャッチせぇよ!」
まさか、
「せーのぉっ!!」
まさかまさかまさかまさかまさかまさか!!
「受け取れぇっ!」
「いやぁぁぁあーっ!!」
「アホーーーッ!!」
身体が宙に浮く。投げ飛ばされた私は目を開くのも怖くて、衝撃がくるのをただ待った
────ドサッ
「ふざけんなお前!はるが怪我したらどないすんねん!」
「あ、れ……?」
私の身体は衝撃を受けることなく、しろちゃんの腕の中に入った。しろちゃんは腰を抜かして叫んでいる
「怪我ないか?」
「うん…あ、ありがと」
トゥルルルルル────
最後に忍足くんがスライディング乗車して無事に電車は出発した
「先輩大丈夫ですか?」
「ちょっと泣いた」
ドスッ
「ぶほっ!」
「アホ!お前なぁ!」
「ええやん間に合ったんやし!セーフやセーフ!」
「アウトやボケ!」
ドスッ
「へぶっ!」
「少女漫画みたいやったわぁ」
「新しく少女漫画コント開発してみよか小春」
「ええねそれ」
「忍足はんサンドバックになってますわ」
「し、死ぬかと思った」
それからしろちゃんをなだめて、なんとかほとぼりは冷めた。私のためにしてくれたことだし、やっぱり罪悪感はある。忍足くんにお礼を言うと、気にすんなと笑ってくれた。これからは気をつけないと…!
「そうだしろちゃん。お父さんが今度の土曜に家に来て欲しいって」
「土曜?空いとるわ。わかった」
「手に入ったらしいよ?」
「ホンマか!そりゃあ楽しみや!」
私たちは揺れる電車の中で、大阪の街が見えるのを待った。一氏くんたちはネタを考えてたり、財前くんは携帯をいじって音楽を聴いていたり。それぞれの時間を過ごしている。私はというと、電車の揺れは心地よくてまぶたが自然と重くなっていた
「………(カクンッ」
無意識に首がカクンとなった。だめだめ、まだ着いてないんだし…我慢しなきゃ!
「……(カクンッ」
ダメだ。眠気がとまらない。私は首を振ったり、ほっぺをつねったりする。すると隣に座ってたしろちゃんが、私の様子を見かねたのか…
「寝てもええで。着いたら起こすから」
「ううん…まだ…」
「肩貸してやるから。ほら」
「………ふぁい…(カクンッ」
そこで私の意識は途切れた
「可愛いなぁ、はるは」
「何や、寝たんかコイツ」
「お前がハラハラさせたからやろ」
「へいへい」
「まぁ、寝顔見れたから許したるわ」
「白石はオカンみたいやなぁ。そのうち大嫌い!とか言われんとちゃう」
「……それは、嫌やな」
「子離れせな」
「ど、努力するわ」
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