07


「……はぁ」
「まだ気にしてんのか」
「するよ……」
「誰にでも失敗はあるて」
「そりゃあ忍足くんみたいに頻度は多くないけど…」
「なんやと!?」

今日私はミスをしてしまった。鶏小屋のドアを開けっ放しにしてしまったため、捕獲作業が先ほどまでされていた。いろんな人に手伝ってもらって申し訳なさでいっぱいだ。先生は気にするなと言っていたけど、やっぱり無理みたい

「……」
「大丈夫やって」
「…鶏になりたい。空飛んで逃げたい」
「鶏は空飛ばへんで」
「じゃあ…ペンギン」
「(どっちにしろ飛ばれへんやん…)」

今は放課後、手伝ってもらった忍足くんと一緒に部室に移動中だ。気持ちを切り替えなきゃいけないのはわかるけど、私にはまだ無理みたい。負のオーラを撒き散らしてしまいそうだ

「……」
「おーい、謙也!はるー!」

コート近くまで来ると、コートの方からしろちゃんが手を振っている。私の態度をみたらきっと心配されるだろうな…

「しゃーないなぁ」

隣で忍足くんが呟く。私がちらっと彼を見ると、彼はしろちゃんに向かってこう言った。

「白石ィ!今日ちょっとコイツ借りるでー!」
「!?」
「…はい?」
「行くで美空」
「ちょ、ちょっと…!」
「おい謙也!?」

彼は私の手を掴んで走り出した。しろちゃんが何か言ったけど全然聞こえなくて。忍足くんが「今日は一緒にサボったる!」って言って、私たちは学校を抜け出した。制服のまま向かったのは自然公園のテニスコート

「ほら!テニスしようや」
「でも部活が」
「俺がしたいねん。早く早く」
「う、うん…」


〜数分後〜

「やっぱり帰ろうよー」
「ダメや!はよせえ!」
「ううう…」


〜数十分後〜

「お前いつになったらサーブ打てんねん!」
「待って!次はいけそうな気がする!」
「よーし、絶対やぞ!」


〜一時間後〜

「ははは!甘い!甘いで美空」
「もう一回!」
「はいはい、無駄っちゅーことを教えたるわ」


〜一時間半後〜

「なかなか…やるやないか」
「はぁ、はぁ、まだまだやる!」
「しゃーないなぁ」


〜二時間後〜

「…ぎぶあっぷ…」
「帰るか…ぜぇ、ぜぇ」
「はい…」

思う存分テニスをした私たちは、クタクタになって学校へ向かった。いつの間にか私の負のオーラは吹き飛んで、テニスを純粋に楽しんでいた。

「忍足くん、ありがとう」
「ん?何がや」
「励ましてくれたんでしょ」
「ちゃうわアホ。俺はただテニスがしたかっただけや」
「それだったら学校でもできるよ」
「…ここでやりたかったんや」
「ふふふ」

ちょっと照れてる忍足くんを見て笑みがこぼれる。私はいい友達を持ったなぁ。

「白石に会うの嫌やったんやろ?」
「えっ…なんでわかったの?」
「浪速のスピードスターにはお見通しっちゅうこっちゃ」
「スピードは関係ないと思うけど」

私はどうも表情に気持ちが出やすいらしい。昔から相手にはすぐ感情を読み取られてしまう。そのため親にもしろちゃんにも随分と心配されたものだ。だからなるべく気持ちが沈んでいる時は人に会わないようにしてる。中学に入ってからは特に。そんな私の行動はしろちゃん意外のみんなにはお見通しらしい

「お前なぁ、やっぱりアホやろ」
「ひどい…」
「悲しいとき一人でいるやつはアホって言うてんねん」
「……」
「心配かけたくないとか、迷惑かけるとか、そんなこと考えてると大阪のおばちゃんみたいになるで」
「それは…(嫌かも)」
「少なくとも俺はお前の心配なんかせえへんから安心せえ」
「うん?」
「だーかーら、白石とかに会いたくないときは俺に会いに来いってことや」

下を見ていた私がぱっと顔を上げると、忍足くんがニカっと笑った。やっぱり浪速のスピードスターには敵わないなぁ…。

「うん、そうする!」
「よし!」
「でも今日は心配してくれたんでしょ?」
「違う言うてるやろ、俺はただ…」
「ただ?」

「お前にペンギンになって欲しくなかっただけや」


そのあと学校に帰ってしろちゃんにこってりと怒られたのは言うまでもない。

「謙也!校庭10周!」
「うっわ!ちょっとはまけろや!」
「はるは明日俺の弁当を作りの刑な」
「はーい。忍足くんガンバッテ!」
「お前ら覚えとけよ!」

翌日、私は忍足くんとしろちゃんと三人分のお弁当を持って学校にいって、彼のご機嫌をとったのでした



 

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