05


「そういえば、そろそろじゃない?」

ある日の放課後。私たちは部活を終えて、用具の片付けをしていた。そんなとき部室の近くに咲いた桜をみて思ったのだ。あぁ、そろそろだと

「そーいえばそうやなぁ。今度は何日くらいたった?」
「三週間くらいやろか。色男になっとるに違いないで」
「浮気か!」
「何がそろそろ何ですか」

財前くんが私に話しかけてきた。そういえば彼は知らないのだ。私たちの恒例行事に。彼が帰ってくることに

「帰ってくるんだよ」
「誰がです?」

「ワシのことやな」

背後に現れた黒い陰。その正体はお坊さんであり、私たちの仲間でもある

「石田くん!」
「おぉ帰ったか石田!」
「銀さんお帰りなさぁ〜い」

彼、石田銀は仏道修行のため数週間の修行に行っていた。とても中学生には見えない体の大きさに最初は驚いたものである。 石田くんは大会が近くなると帰ってくる。最もいつも修行しているわけではないけれど

「みんな元気そうで何よりや」
「あ、石田くん紹介するね!一年生の財前光くん」
「どうも」
「石田銀や。よろしゅうな」
「銀やないか〜!よう帰ったな」
「オサム先生、ご無沙汰してます」
「うんうん、えぇ顔つきになったな。1こけしやろ!な!やろ!」

オサム先生も試合のオーダーに悩んでたから、石田くんが帰ってきてくれて嬉しそうだ。石田くんは四天宝寺で一番のパワーの持ち主だから、私も仕事でよくお世話になってる

「銀がいてくれたら百人力やで」
「白石はん部長になったんでしたな。おめでとさん」
「ありがとう。また一緒に頑張ろうな」
「石田先輩。その頭出家したんスか」
「これはネタや」
「ネタではげるんですか」
「ふふ」

石田くんと財前くんは打ち解けるのが早いらしい。2人とも冷静な所があるからなぁ。似てる部分があるのかもしれない


その翌日。忍足くんが昼休みに私たちを屋上に集めた。いいことを思いついたとか何とか…。また新しいギャグとか言わないといいけれど

「石田も来たことやし!みんなで花見でもどうや」
「お、謙也にしてはええこと言うやん。そういえば自然公園の桜がええ感じやったなぁ」
「いやん素敵ぃ!イケメンウォッチングの準備せな!」
「珍しくまともな意見だね忍足くん」
「財前んん!頷いてんのバレとるで!」
「ッチ」

こうして、私たちは石田くんの復帰のお祝いも兼ねてお花見に行くことになった。場所は四天宝寺の前にある自然公園で、今の時期は桜が満開だ

「じゃあ私は張り切ってお弁当つくっちゃおうかな」
「先輩包丁握れるんですか」
「こうみえて料理は得意なんだな私」
「ハルの飯は世界一やで。部長である俺が保証するわ」
「ついでに浪速のスピードスターも保証したるわ」
「部長が保証するなら大丈夫っスね」
「無視はあかんでお前!」

両親が忙しいせいか、私は小さい時から料理が好きになっていた。遅く帰る両親に美味しいって言われるのが何より嬉しくて嬉しくて

「楽しみにしててね」
「美空ー、たこ焼き入れといてくれ」
「はいはい」

帰りにみんなで食材の買い出しに向かった。500円ずつ出し合ったので予算は結構豊富だ。忍足くんがカゴにたくさん入れようとするので、無駄や!ってしろちゃんが無駄なく省いてくれた

「決戦は日曜日や!遅刻するんやないで」
「はーい」
「俺とハルは料理持って行くから、場所とり頼んだ」
「ワシがええ場所知っとるで」
「ほな小春と俺が場所とりしとくわ。な!小春ぅ?」
「せやね。降水確率も10%未満やから大丈夫やろ」
「先輩方イベント好きですよね。俺は遠慮「財前くんも来るよね!」……はぁ」

お花見なんて行ったことのない私は、期待に胸を膨らませて日曜日を待った。前日に両親に言うと白石くんが一緒なら安心だと、相変わらずの返答。私はもう小学生じゃないんだし、もうちょっと信用してくれてもいいのにと稀に思う

ピロロロロ♪

携帯が鳴った。しろちゃんからメールが着たみたい。内容は明日のお花見についてで、朝にお弁当などの荷物運びをしてくれるらしい。私はよろしくお願いしますと返信して携帯を閉じた。ワクワクして寝れない気持ちって遠足の日以来かもしれない

***

「うーん、唐揚げ作りすぎちゃったかな」

キッチンで奮闘して約一時間。昨日のうちに下準備してたとはいえ、やはり時間がかかってしまった。今私を悩ませているのは気合いを入れて作りすぎた唐揚げだ

「タッパーにいれて別に分けようかな。えーと、タッパータッパーっと」

ピンポーン♪

「はーい!」
「はるー、迎えに来たでー」
「入って入ってー!」

しろちゃんが迎えに来たみたいだ。さすが時間ぴったりのご到着。私は重箱に急いでふたをする。食べる前に中身を見せちゃったらつまらないもんね

「どうも」
「財前くん?来てくれたんだ」
「ほっとくと来ないかもしれへんから連れてきたわ。たくさん荷物持たせるつもりで」
「先輩ほんまに弁当作ったんですか」
「そうだよ。あ、その包み持ってくれる?こっちの飲み物はしろちゃんね」
「弁当は任せたで財前〜」
「はぁ」
「私は食器持っていくねー」

私たちは皆が待ってる自然公園へと急いだ。歩いて移動してると花見をするらしい大人たちが車で横を通り過ぎていく。楽しみだねと財前くんに言うと、そうっスねと返事をされるとしろちゃんと目があって互いに微笑んだ

「なに笑ってるんですか」
「お前がやけに素直だからや」

いつの間にか母性本能が働いているのか、私は彼の成長が楽しみになっていた。きっとそれはしろちゃんも同じだろう。私は彼が立派な四天王寺のテニスプレイヤーになるまで、静かにそばで応援できらいいな

「先輩にやにやしすぎですわ」
「ごめんごめん」

その後、作りすぎた唐揚げは「食ったもん勝ちやぁあー!」と叫びながら食べた四天王寺テニス部員のお腹の中に綺麗におさまりました




 

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