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春の陽気の中、私は元気に手を振った

「おはよー!」
「おはようさん」
「今日から二年生だね」
「新四天宝寺テニス部、活動開始や!」
「ふふ、頼りにしてます白石部長」
「おだてても何もあげへんよ」
「わかってるよーだ」

私、美空はるは四天宝寺中学のテニス部マネージャーをしている。今日は私たちが二年生になる最初の日だ

彼、白石蔵ノ介は私の幼なじみで、新しいテニス部の部長でもある。家が近いせいか、朝はよく一緒に登校している。部活も一緒なので一緒に帰ることもしばしば。お陰で両親は安心できると喜んでいる

「今日はHRだけだから、たくさん練習できるね」
「おう。今日も頑張って練習するで」
「美空ー!おはよう」
「忍足くんだ!おはよー」
「こらこら謙也。俺には?」
「おったんか白石。おはようさん」
「俺はついでか」

忍足謙也くんは私のクラスメイトで、同じテニス部のメンバーだ。一年生の頃から一緒に頑張ってきた大切な仲間。足がとっても速くて、ナニワのスピードスターって呼ばれてたりする

「しろちゃんも怒らないでよ?部長さんなんだから」
「わかってる。それにしても…そのしろちゃんって呼び方、いつまで続けるつもりなんや」
「え?ずっとだよ」
「はははは!ええやん白石!しろちゃんはしろちゃんや!」
「……はぁ」

バンバンとしろちゃんの背中を叩いて笑う忍足くん。ちょっと笑いすぎじゃないの…って気もするけど

私は昔から彼をしろちゃんと呼んでいる。彼の妹の友香里ちゃんがそう呼んでいるから、物心ついた時からずっと彼はしろちゃんだ。当の本人はペットみたいで嫌らしい

「ほらほら美空にしろちゃん!学校遅刻するで」
「やばい、2人とも走るで!」
「わわ!待ってよ!」
「一等は購買の限定メロンパンやー!」
「ほら、はる!荷物持ったる!」
「ありがと!」

私たちは学校に向かって走った。もちろん一等は忍足くんで、私としろちゃんはメロンパンを奢るハメに。よく考えたら忍足くんとかけっこで勝負なんて、負けるの確定だよ。詐欺だ…

「疲れたぁ〜」
「ギリギリ間に合った〜、確か一限は集会やったな。グラウンド行くで」
「忍足くんは…もういないみたいだね」
「謙也なら全速力でグラウンド行ったで」
「えーっと?」
「どちらさん?」
「小石川や!小石川!いくら影薄くても名前は忘れへんやろ普通!」

昇降口で会ったのは副部長の小石川くん。彼はテニス部の中でもキャラが薄い方なので、みなさん忘れがちな存在。真面目な性格なのでよく仕事を手伝ってもらったりしてる

「美空、お前だけは俺を忘れへんて信じとったのに…」
「あはは、ごめんごめん。つい」
「いい傾向やん。お前も大阪のノリに慣れてきて俺は嬉しいで」
「俺は悲しいけどな」

私は去年の初め、東京から大阪に引っ越してきた。慣れない土地で不安もいっぱいだったけれど、初めてできた友達がしろちゃんだった。それからテニス部のマネージャーになって、忍足くんたちに出会って、今はとても幸せだ。あの時の不安が嘘のよう!

***

「まずはランニングからや。行ってくるな」
「うん。みんな頑張って!」

基礎トレーニングに向かうみんなを見送ってから、私は仕事を始める。まずはドリンク作りから。忍足くんは人一倍汗をかくので塩分多めのスポーツドリンク、しろちゃんは健康的に栄養素たっぷりのドリンク。人によって中身を変えるのが私のこだわりだったりする

「えっと一氏くんは…」
「よう美空。精がでるなぁ」
「オサム先生!みんなランニングに行きましたよ」

顧問のオサム先生はギャンブルが好きで、部活に顔を出さないこともしばしば。でも部員たちからの信頼は厚く、コーチとしても一流だ。もちろん私も尊敬してる

「急で悪いんやけど、ランニング終わったらみんなを集めてくれるか」
「あ、はい」

いつになく真面目な顔したオサム先生に、私は少し不安を感じた。何か重要な話がされるに違いない。私はみんなが帰ってくるのをどきどきしながら待っていた。


 

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