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「誰が地味やねん!!!!」


部室に響き渡る大きな声。その声の主は、さっきまで自分の写真が載った月刊プロテニスを読んでたはずなんだけど…。読み始めたら急に怒り出した

「どないしたん謙也」
「見てみぃ!この記事!俺のことただ足が速くて地味て書いてあるで!」
「なんやそんなことか」
「なんやとはなんや!」
「センパイそんなん気にするくらい繊細やったんですか。初めて知りましたわー」
「よし財前表に出え!!」

忍足くんは記事を楽しみにしてだだけに、内容の衝撃が強かったらしい。だから見ないほうがいいって言ったのに…。でも地味と言われれば地味かも?

「というかまわりが普通じゃないのかな。忍足くんは普通なんだよ」
「アホ抜かせ!大阪人にとって普通はイコール地味やねん!覚えとけ!」
「荒れてはるなぁ、忍足はん」

今日は彼には近づかないでおいたほうがよさそうだ。部活も終わったことだし、さっさと帰ってしまおう…。

「こうなったら派手になったるで!」
「何いうてんねん。今更イメチェンてお前」
「金髪にでもするんですか」
「……どないしよ」
「俺に聞くなや」

考えてみると、しろちゃんは包帯が印象的だし、石田くんはスキンヘッド、金色くんと一氏くんは一緒にいるだけで目立つし、財前くんはそうでもないけどピアスとかしてるし…。あれ?もしかして私も地味の部類に入るのかな

「私も髪とか色変えて見たほうがいいのかな…」

「あかん!」
「やめてください!」

「へ?」

しろちゃんと財前くんに猛抗議された…。そっか、マネージャーは派手でいる意味ないものね。私はお笑いにこだわりはないし。うん、このままでいいかな

「美空〜、何かエエ案ないか?」
「うーん」
「やっぱり金髪ですよ金髪。先輩ならローラースケート履いてジャニーズ目指せますわ」
「いつの時代やねん!」
「いやいや、あえて基本に戻って坊主にしてみよか」
「お前ら俺の髪型変えようとしとるだけやろ」
「今まで以上に足を鍛える…とか。やっぱり忍足くんといったら足だよね」
「これ以上?」
「よし!ほんならいっちょ試してみよか」
「面白そうですね」
「おい!俺はまだ何も言うてへんで!」

「みんなで謙也の足鍛えんでー!」
「「「おん!」」」



***


「ふぐぐぐぐ!!」
「遅いで!もっと早く走れ!」
「先輩ガンバレー」

最初はパワーをつけるため、タイヤに乗った私ごとタイヤを腰にヒモで巻いて走る。こう言うのもなんなんだけど、もっとダイエットしとけばよかった…

「よっしゃ、銀!はるの代わりにタイヤに乗って来い」
「うむ」
「鬼かお前ーーー!!」


***


「うおおおおおおおおおおおお!!」
「あと四分で五キロや!」
「先輩ガンバレー」

次は持久力をつけるためにランニングマシンを使った。指定された時間内に決まった長さを走らなくてはいけない。私は石田君たちとお茶を飲んで見守っている

「ズズズズ…」
「美空はんお茶入れるの上手やねえ♪」
「ホンマ、お茶が美味しいわ」
「ふふ、ありがとう」

「お前ら何くつろいどんじゃーーー!!」
「あと一分」



***


「どわあああああああああああああ!!」
「おー、飛んだ飛んだ」
「先輩ガンバレー」

最後は石田君に空に投げてもらって、無事に着地するバランス力の特訓だ。石田君はハンマー投げの選手になれるんじゃないかっていうくらい、容赦なく忍足くんを飛ばす

「肩とか大丈夫?」
「大事無い」
「俺の心配せえーーー!!」

ドッボーンっ!!

「あ、川に落ちたで」
「財前、拾てき」
「アイアイサー」

彼は死ぬんじゃないだろうか…



***


「…俺、もう地味でええわ」

川から引き上げた忍足くんは、今にも口から魂が抜け出そうだった。生きてるってすばらしい。それを聞いたしろちゃんと財前くんは『してやった』みたいな顔をしてる。もしかして二人とも最初から諦めさせるために…

「そうやで、謙也は謙也なんやから。変わる必要なんかどこにもないで」
「白石…」
「先輩、お疲れさんでした(棒読み」
「財前…」

おお、なんか青春の一ページみたになっている。ちょうど夕日が彼らを照らして、雰囲気を一層かもし出している

「礼はいらんで、なあ財前(面白かったし」
「そうですね(面白かったし」

「お前ら、一発殴らせろやあーーーっ!!」



今日も四天宝寺は平和です。


「はは、地味なら俺も負けへんでー」
「小石川はんいたん?」
「……」





 

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