*オズワルド・レイン

・sample 1

ええ……唄、ですかぁ……。……し、仕方ないですねェ……。
(召喚された主の自室、リビングの中央に設置された布張りのソファーの座部を背もたれにして毛足の長いラグが敷かれた床上に直接、長身ゆえに持て余す足を立てて折り、胸元に抱き込むようにしてこじんまりと座る己に掛かる主人の声。唱歌をねだる内容にただでさえ垂れた眉を殊更に垂らして渋るのは歌うこと自体が嫌なのではなく、自身の歌声を他者に聞かせることに抵抗感を持っているからに他ならない。華やかな見た目と歌声を持つ家族とは対照的に、自身はその身の色彩こそ鮮やかではあれど華やかとは言い難く、別の観点から人目を引いてきた体験から培われた劣弱意識は抜けよう筈もなく。けれど不承不承と応じたのはここが主人と自分の二人だけのプライベートな空間であることに加え、つい今しがたまで一心に課題に取り組む様を見守っていたからでもあり、膝を抱えた姿勢のままではあるものの、観念したかのように薄く開いていた目蓋の上下をくっつけて視界を閉ざし)
近くに、来てくださいね……出来ればお隣に座ってもらえると嬉しいんです、けどォ。



[back]


・sample 2

(講義を受ける主人の共をするために訪れた階段型教室の片隅、当然のように主人の隣の座席に身を滑らせると、長い背を縮こまらせる。と、突如として飛んでくる鋭い批難の声に広い双肩を震わせて驚愕の表情で背後を振り向けば批難の主と顔を合わせることになり、やかましい相手の趣旨が要は自身が邪魔だと告げるものなら驚愕の面差しは当惑に色塗りされていき)
…………、はあ。あのぉ、それってアナタが小さいせいもあるんじゃあ……。
(己の背丈が板書の写し書きを妨害することは理解出来、そこを責められるのは納得が行くものではあれど、好き好んで図体ばかり成長した訳ではない。ましてこちらを責める相手が一般平均よりも遥かに小柄とあっては、八の字に眉を垂らした弱気な面構えのまま、おずおずと開いた口唇が視覚から得た情報を率直に言の葉に乗せてしまえば批難の声が怒声に変化。どうやら逆鱗に触れてしまったらしいことを悟って、首を竦めて両耳を手のひらで覆い怯える様は大きな肢体でなければ傍目からの同情も買えただろうか)
ひいッ!?ごごっ、ごめんなさぁいっ!ワタシは事実を述べただけでしてェ……!



[back]


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -