*姜皓月

・sample 1

(学園内の中庭の一角。傍らの少女と共に広く緑の葉を広げた樹木が木陰に陣取り、穏やかな時間の流れを満喫している。晴天に恵まれた本日は未だ煌々と太陽が地上を照らしてはいるが、己の居る場所では生い茂る樹木の緑が陽光を遮り眩しさはなく、それでいて過ごしやすい気温とあれば徐々に眠気に襲われるのも道理だろうか。長い袖に覆われて手先が全く見えない両腕を上に持ち上げてひとつ伸びをすると、許可を得るよりも早くごろん、と彼女の膝を枕にして後頭部を乗せたなら慌てた様子の彼女と下から見上げる己の目線がかち合い)
…んん?少し膝を借りたいのだが、何ぞ問題でもあったかのう。嫌などと、いけずは言うまいなぁ。



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・sample 2

(課題のために必要な魔導書を求めて学園敷地内に併設された図書館に訪れたのは閉館間もなくといった頃。クローズの迫る時分だからか館内には日中程の人影はなく、悠々と目当ての探索没頭できるとあれば、数分も経たずして目的の書架の前まで辿り着く。司書や図書館を管轄する使い魔達の性格が滲み出るような、書架の棚に几帳面にきっちりと並べられた書物の背表紙をひとつひとつ目で辿り、やがて目線よりも遥かに高い上段で書物名を見出だすと片腕を伸ばし。ところが、日頃は袖口に覆われて見えない指先が姿を表すほど目一杯に背伸びをし、腕を伸ばしてもあと一歩の所で届かない現実に伸びを解除しながら細く長く息を吐き出すと、幼い見た目の少年から年齢に見合った青年の容姿に変化する。縮尺も変われば先ほどの苦労が嘘のように目的の書を書架から引き出して手元に収めることに成功して、満足げに頷く間に再び元の小柄な少年の形に戻り)
……ぬ、大人になっていた、だと?それはほら、白昼夢というやつよな。儂はずっとこの愛い姿のままだぞ。ほれ、よぉくみるといい。
(周囲に人は居ないと思っていたが、どうやらそうではなかったらしいと気付いたのは踵を返した先に佇む少女と目が合い、身長が伸びていたことを指摘されてから。姿を変化させられることは隠してもいないが、大々的に公表しているものではない。まして己にとって面識のない相手とあればその後の解説を面倒臭がり、長い袖をぶらぶらと揺らしながら書架と書架の間を歩んで少女の前で立ち止まり、下から覗き込むようにして真意の読めない微笑みを湛え)



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