◇ Sample ◇

*シュテルンヒェン・シュヴァルツ

・sample 1

(形ばかりの主従契約を交わしてはいても、学園に通い教えを乞う学生の魔力では己の行動を制限するには至らずいつでも契約を反故に出来るものではあるが、そうせずに甘んじて使い魔の在り方を受け入れているのは偏に己を召喚せしめたのがこの少女であるがゆえ。主人の命を受けずとも自由気ままに動けはするが、現状己の興味を惹くのが主たる少女だけならば彼女の放課の行動に従い、学園内でも広い敷地と膨大な蔵書を有する図書館へと訪れる。猫の姿で入館していたが、時間経過につれて人の目が少なくなってきたことを認識するや人型に戻り、少女が腰掛ける対面の席に悠然と腰を下ろし、手持ち無沙汰に彼女が読み終えた書物の一つを手に取り紙面に目を通して時間経過を図る中、不意に掛けられた声に目を向け)
…おや、おかしなことを仰る。主の自由時間を妨げないのは使い魔として当然の心得でしょう?
(主人は自らが大人しく追従しているのが不思議な様子。さも殊勝な使い魔らしい口振りながら、にっこりと張り付いた微笑や、くつくつと喉奥から笑い声を噛み殺す様はその限りではなく。徐に立ち上がって相手の傍らに佇むと、恭しく掬い取った白い手を顔まで持ち上げ、薄い唇を手の甲に押し付けて)
それとも……こうして、邪魔をされたかったと?



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・sample 2

――ああ、これは失礼。私、すっかりと見えませんで。
(ゆるりと首を傾けて、眉を下げる表情は柔和な紳士そのもの……ただし、この男でなければの話だが。乱れなく着込んだ衣服の胸元にしなやかな指先を揃えた手の平を宛がい僅かに上体を傾けた辞儀をする所作こそ滑らかで恭しいものだが、張り付いた微笑みは見るものによっては胡乱な印象すら与えるだろう。それを証するように細められた深い紫を宿す瞳には蔑視の色が浮かび。向き合う相手は己よりも頭一つ分は低い人狼なれば軽視を隠す訳等なく、世間話でもするような軽い語調で厭味を織り交ぜ)
獣臭さは感じていましたが、それが貴方だったとは。どこかの野良犬でも紛れ込んでいるものとばかり。



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