ボクには兄がいる。
ボクは兄上のことを尊敬しているし、兄上のような悪魔になりたい。
兄上の望むがまま、駒になっても構わない。
…いまでもそう思っているのですけど…。
「ただいま戻りました」
「アマイモン!」
爆弾焼きを食べて外をふらふらっとして、兄上の理事長室に戻ってみれば。
ボクを見るなり大きな机でお仕事をしていた兄上が立ち上がった。
立ち上がった時に大きな椅子がうしろに倒れで、がたんとけたたましい音がなる。
その反応にボクは今日もやれやれと思う。
「お前、いままでどこに行っていた…!」
「どこって…兄上に言ったじゃないですか
ベヒモスと爆弾焼きを食べに行ってくると」
確かに出ていくときに兄上に伝えたはずだ。
兄上は毎回ボクが外に出るたびにこと細かに、どこに誰と何をしにいくのか聞いてくるから間違いない。
今日だって散々しつこく聞かれたのはさすがのボクでも覚えている。
ボクの言葉に兄上はこぶしで机をたたいた。
それからずんずんとボクの前にきて、背の高い兄上がボクをむすっとした顔で見つめる。
何がいけなかったのかと首を傾げて兄上を見つめていたら。
「……アマイモン」
「なんですか?」
「その首かしげ…反則的に萌える…!」
「………ハイ?」
さっきとはうってかわって顔を赤らめる兄上が息を荒くしながらボクを見た。
こういうときは嫌な予感しかしない。
「兄上、ボクそろそろ…」
「アマイモン、かわいい…!
さすが私の愚弟!」
「……ぐぇっ」
適当に理由をつけて逃げようとしたら兄上がボクの体をぎゅっと抱き締めた。
おかげてボクは兄上の服に顔が埋まってすこし苦しい。
「アマイモンが可愛くて心配なんです…!
今度からお散歩に行くなら私が一緒に…」
「ダメです
兄上はお仕事があるじゃないですか」
兄上が物質界でのお仕事で忙しいのは知っているからボクは邪魔したくないのに。
そう言えば兄上がいまにも泣きそうな顔で「アマイモン…!」と呟く。
またくる、と思う前にまたぎゅっと抱き締められ、「どうしてお前はそんなに可愛いんだ…!」と兄上が叫んだ。
可愛い、なんて嬉しくないです兄上。
「可愛い弟にはご褒美をやらなくては…」
抱き締めたまま、兄上がボクの顎を持ち上げて口づけをひとつ。
ふたつ、口づけ。それから兄上の長い舌がボクの口内に侵入して思わずどきっとする。
兄上のキスは好きだけれど、すこし苦手だ。
「寝室に行こうか、アマイモン」
これから何をされるかなんてわかっているのに。
「……ハイ」
キスだけで、兄上の言葉から逃げられなくなるから。
(また兄上はボクでお遊びになるのかと思うと
…うずうずしてきます…っ)
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これをシリーズにしようかなって思ったけどこれ書いてもう満足してしまったわたし
201289 つき
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