5th | ナノ






背中を嫌な汗が流れる。魔法で丁度良い気温になっているはずなのに寝ることができない。自分の鼓動が激しくなる。呼吸ができなくなる。息が苦しい。酸素が足りなくて頭が痛い。

体を虫が這うような感覚に襲われる。


あの日の、あの時の感覚がフラッシュバックする。

小さいとき私は誘拐された、家の財産を目的とした。お父様とお母様は誰かのパーティーにお呼ばれしていて、家にはいつもより人が少なかったらしい。目が覚めたときは目隠しされていた。拘束され身動きが取れない状況。呪文で幼い私を苦しめる男の人。泣き叫んでも助けを乞うても状況は変わらない。気づけば口内に気持ち悪いものが押し込まれた。嘔吐しそうになったり歯を立てれば、体を切り刻まれるような苦痛が襲い、自慢だった長い銀髪はバッサリと切り落とされた。服を剥ぎ取られ蠢くような感覚に、悪寒が走る。急に口内に粘着質の不快なものが出され、それから消えた気持ち悪い物体。
その後は意識は細い絹糸で繋がっているような状態。何度も何度も繰り返される行為に吐き気と悪寒は止まらない。絹糸がプツリと切れたのは、この世を切り裂くような誰かの悲痛な叫び声が聞こえたから。そこから私の記憶は途絶えている。


どこか異次元ように感じるあの感覚、感触を思い出してベッドの上で嘔吐、嘔吐。嘔吐の繰り返しで胃液しかでなくなる。あのときの恐怖が思い出され、それでも涙は止まらない。

ここ最近は過去に振り回されることはなかったのに、何故。


ぐるるる、というどこか寂しげなロンロンの声。私の護身に、とやってきた白虎。「大丈夫だから、」と声をかけたくても嗚咽しか漏れない。ロンロンを一撫でしてとりあえずバスルームへ。私の記憶もシャワーで流せたら良かったのに、ね。




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