メアリーと一緒に大広間へ向かう。早く道を覚えないとね、なんて笑いながら。代わりにロンロンに覚えてもらおうかしら。と、隣を眠そうに歩くロンロンの背中をなでる。
「ジュリアと私の制服、ちょっとデザインが違うと思わない?」
「あら、」
もしかしたら犯人はお母様かもしれない。仕立て屋さんが家にいらっしゃった時にたくさん注文をつけてらっしゃったもの。お母様ならやりかねない。
「そっちの方がオシャレだわ」
「正規の服装じゃなくて良いのかしら」
「そんなの良く見ないと分からないから大丈夫よ」
既に大広間へ来ていたジョシュと友達の近くに座らせていただく。まだ、早い時間のようでテーブルについている人は疎らである。ジョシュに彼の友達を紹介していただく。身内以外の男性と話すことと握手ぐらいはできるようになった。
「あら、ジョシュア君の制服もみんなと違うわね!」
「母様の仕業ですよ、ウィンドボナ先輩。」
「意外ね、私の名前を知ってるなんて。それと私のことはメアリーで良いわ」
「純血で旧家それだけで無条件で有名になるんですよ、メアリー先輩。」
それもそうね、と笑うメアリーに回りの人も笑顔になる。向こうからコツコツと無理矢理ヒールの音を立ててやってくる女の子。私と同い年か年上に見える。
「あら、ジョシュア君お久しぶりね。夏休みの間に家に遊びに来て、って言ったじゃない。」
「お久しぶりです、シャンポリエール先輩。忙しかったものですから」
すごく困ったように会釈をするジョシュ。シャンポリエール家、なんて聞かない名前である。近くに来て気づいたことは、化粧が濃すぎて逆に怖い。メアリーをチラリと見ると、嫌そうな顔をしていた。メアリー、そちらは誰?と、あごで私を指す様子は全く上流階級の人間に見えない。
「編入生よ」
「はじめまして、ジュリア・ウイルソンです」
会釈するとシャンポリエールさんはふふん、と鼻で笑ってきた。
「ジュリアね。私は、セルシア・シャンポリエールよ。セルシー、って呼んでも良いわよ。」ウイルソン家なんて聞かないし容姿も普通以下ね、なんて回りの子に言っている。回りに聞こえるのに、よく言えるわ。容姿が普通以下なことぐらい人に言われなくても分かっている。メアリーの眉間のしわはどんどん酷くなる。
「姉様が何か?」
と、ジョシュが一言言うと余裕ぶっていた顔はどんどん青ざめ、ルームメイトに挨拶するからと一言言うと取り巻きを引き連れて去っていった。
「ジョシュア君はね、セルシーのお気に入りなのよ」
はぁっ、とため息をつくとメアリーはカップに残っていたコーヒーを飲み干した。