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※注意!
管理人は六章以降をまともに読んでません。シンオウ地方に捏造過多です。基本ゲームとアニメを基にしてます。苦手な方はご注意ください。
「───本当に、これで良かったんですか?」
一歩先を行く彼女に、ふいに投げ掛ける。彼女は動きを止めることもこちらに振り向くこともなく淡々と語った。
「何のこと?………と、言っても無駄そうね」
「当たり前です。僕に誤魔化しが効くとでもお思いですか?」
「思わないわ。鋭いうえに遠慮のないアンタには」
「酷いなあ……僕、これでも結構ナイーブなんですよ?」
「それこそないわね。アンタどっからどう見てもタフでしょ」
「まあ、否定はしません。貴女とは違ってね」
暫く進んだところで漸く彼女が振り返る。目を鋭く尖らせながら。僕はそれをケラケラと笑いながらいなす。
「…それで?質問の答えをまだ聞いてませんが」
「………ハァー、分かった。アンタにはちゃんと話すから」
今度は僕が静かに目をスッと鋭くさせると、彼女は諦めたように歩みを止めた。僕もそれに合わせて彼女の隣に位置する。
「アイツの誕生日パーティーに間に合わなくなるかもしれないのにこんなところに居ていいのかってコトなんでしょ?」
「大体は」
「良いわけないじゃない」
彼女は顔を俯かせているためその表情を窺うことは出来ない。だが、僕にはそんなことは関係ない。彼女は今、絶対に涙を流すのを我慢している。
…慰め?僕がそんなことをするとでも?僕が彼女と共に居るのはあくまで利害が一致して、尚且つ『仮面』を脱いで接することの出来る唯一の相手だからに過ぎない。
僕は彼女が弱っている時に漬け込んで株を上げるなんて卑怯な真似はしたくない。今は何もしなくても彼女に一番近いのは僕なんだしね。
「だから、今日中に終わらせるんでしょうが」
それに───葵先輩は、誰かの助けを必要とするほど弱くもない。
確かに、彼女は脆い。核心を突かれると明らかに動揺するし、追い込められると壊れてしまう。
「良ーい?アタシの目的は何?一人が寂しいからアンタを巻き込んで旅に出ること?アイツらにアタシのことを探してほしいことだったかしら?
違うでしょ。───『私』と、決別するためでしょうよ」
だけど、彼女は美しい。容姿ではなくて、その心が、その覚悟が、その生き様が。誇り高く、凛然としている。
僕を見つめる力強い青の双眸に数秒間囚われ、動けなかった。
「(…やれやれ、困ったお人だ。この僕に誤魔化しは利かないと言ったのは貴女なのに)」
隠しきれていませんよ。僅かに揺れる瞳の奥に、まだ迷いがあることを。
「───昔からそうでしたよね、貴女は」
ボソリと呟いた言葉は、彼女には届かなかったらしい。それで良い。彼女すらも理解していない『彼女』のことを知るのは、僕だけで良い。
「…わかりました!黙って貴女に従いますよ」
だから、僕はそう言って誤魔化す。どんな関係であっても構わない。彼女の隣に居られるのなら、僕は平気で嘘をつく。
「余計なコトせずに始めからそう言っとけば良いのよ」
「余計とは何ですか。僕は貴女を心配して聞いたのに」
「心配ぃ?アンタが、アタシを?」
「………何ですか、その言い方は」
「べっつにぃ?何でもないわよ?」
「(イラッ)」
「アンタも案外可愛いトコあんじゃない」
「いくら先輩でもキレますよ?」
「え、何よその笑顔は。キm」
「え?」
「何でもない、だからこっち見んな」
嫌だなあ、そんな即行で謝らなくても良いじゃないですか。
まあ、力でもバトルでも僕の方が上なんでしょうがないですけどね。
「……そんなコト言ってる内に着きましたよ、あの場所に」
目の前に聳え立つのは、シンオウの中心に位置する、険しく高い山。
テンガン山
「───ええ、行くわよ。『やりのはしら』へ!」
「はい!」
結局、貴女が望むものは、叶うはずのないたった一人。
開始
(深く考え過ぎなんですよ、葵先輩は)
(もっと誰かを頼ってみても良いんじゃないですか?)
((…何て、戯れ言ですね))