★剣の舞★

バロン王立兵学校で、剣技の大会が開催される。
セシルは予選を通過し、トーナメントへの参加権を勝ち取った。

3年前までは字の読み書きもできなかった哀れな少年は、今や学年でも1位2位を争う秀才となるまでに成長した。
この頃には、もはや疑いようもなく、セシルの表面にはクルーヤの息吹が漂っていた。

遅かれ速かれ、セシルが学校で頭角を現すのは目に見えていたことだ。
恐れてはいたが、いざそうなってみると、他愛のないのことのように思われた。

セシルは見事に決勝戦まで勝ち上がった。
城で、私が課している暗黒生活には見られないような陽気さが、セシルの表情に生き生きとした光を与えていた。

対戦相手となるのは、カイン・ハイウィンドだ。
リチャード・ハイウィンドの子息。
ハーヴィ家が断絶した後、バロンで最も位の高い公爵家だ。

カインは、見るからに気位が高い顔をしている。
セシルが気に食わないのだろうか、目を合わせようともしない。
腕を組み、顎を上向きに構え、尊大な姿勢で出番を待っている。

試合が始まる。
両者が競技場で向かい合い、礼をする。
俯いた時、セシルの銀色の巻き毛が揺れ、額を隠した。上体を起こすと、きらめくすみれ色の瞳がカインを射った。

セシルはぴったりとした白いフェンシング用のユニホームを身に着けていた。
長袖ではあるが、子供らしく柔らかい肩甲骨の起伏、背骨、下へ向かって細くなっていく腰、張りのある尻、そういうものが麗しく表現されていた。
セシルの動作は明晰で、カインが猛攻撃を仕掛ける剣先を優雅に交わし、侵略を防いだ。

なかなか優位に持っていけないカインは焦れていた。
セシルは脚を踏み込み、鋭い一撃をカインに浴びせる。
セシルの突きには、美と、直截性と、若さがあり、黄金の剣で快音響く一撃を加えようとする力を含んだ小宇宙が形成されていた。
美しい!

しかし、カインはセシルが攻め込んでくるのを待ち構えていたのだ。
セシルが優美に伸ばした腕を、素早くすり抜け、セシルの剣先に自分の剣先を絡ませると、セシルの剣を弾き飛ばした。
カラカラという音を立て、剣は床に転がり、その衝撃で、セシルは後ろへ倒れた。

とどめだ、と言わんばかりに丸腰のセシルへ剣を突き付けるカイン。
闘志にきらめいていた菫色は怖じ気づき、懇願の目をカインへ向けた。
片腕を顔の前に翳し、カインの突きに備える。
まるで、傲慢な大貴族が小姓を打ちすえるかのように、二人は主従の関係に結ばれ、セシルは主の許しを乞うていた。

美しい二人の少年が、殺し合いを演じている。
中世のコロッセウムで、奴隷が面白半分になぶり殺される様子を見降ろす、暴虐の帝王として、私はカインを見ていた。
もし、カインがこちらを見て、許可を求めるようなことがあれば、私はもちろん、突き出した親指を下へ下すだろう。
“よかろう。殺せ!”
剣先がセシルの柔らかな腹に突き刺さり、芳しい血を滴らせるところを想像し、私は恍惚に浸った。

そこで、教諭が止めに入り、カインの剣は制止された。
試合はカインの勝ちとなった。
カインは踵を返し立ち去る。セシルはその場に取り残された。


私は満足して城への帰ろうとした。
兵学校長やら会長やらの謝辞を適当に受け流し、剣技の指導の優れていることや、少年たちの活気が素晴らしいことなどを褒めた。

兵学校から出ると、庭園のはじにセシルとカインの姿を見つけた。
カインが何か云いがかりを付けているように見える。セシルは困ったように首を振りながら、後ずさりをする。
カインが間合いを詰め、セシルを木に押し付けると、キスをした。


面白いものを見た。カインのセシルへ対する殺意、それは燃えるような愛の表現だったのだ。
カインの幼い恋情に、残酷なほど悲劇的な末路を与えてやろうと心に決めた。



城へ戻り、セシルを膝の上に乗せ、今日の功績を称えてやった。
「準優勝おめでとう」
セシルは嬉しそうにしていたが、なんだか私に遠慮をしているようであった。
憎きハイウィンドの狼藉が心にわだかまっているのだろう。
私が今まで与えた凌辱の方が、想像を絶するほど酷い内容だったが。

沈黙がちになった、セシルの顎を上向けると、私はセシルの唇を奪った。
セシルの肩が震える。
最初は啄ばむように。
次は乱暴に。カインのキスを思い出させるような鋭さを持って。
そして、顎を指で開かせ、舌を差し込んだ。
セシルの小さな舌を絡め取る。
「ん・・んふっ・・んぅ・・・」
セシルの肩が小刻みに震える。私はかまわず唾液を流し込んでやった。
少年のまだ酸っぱい果実のような恋するキスは、醜く腐臭を放つ私の退廃のキスで覆い尽くされた。

そのままズボンを脱がせ、セシル自身を梳いてやる。
後孔も馴らしてやると、セシルが苦しそうに頭をのけぞらせた。
「んぅうっ・・・はっ・・・ああ」
唇の端から、私の唾液をこぼしながら喘ぐ。
準備が整うと、脚を抱え上げ、座ったまま挿入した。
「あっ・・んん・・んく・・・」
再び唇を奪う。頭を押さえつけられ、セシルの自由は完全に奪われた。なすすべもなく貪られる。
私はそのまま立ち上がると、セシルを抱え上げたまま、抜き差しを始めた。
「んん!・・んぅ・・はぁっ・・んっ・・・」
セシルの体が跳ねあがる。
昼間の大会で、素晴らしい弾力性を見せたセシルの筋肉は、夜、また違う柔軟性と弾力とで私を楽しませた。
柔らかな臀部が目の前で跳ねている。
「んっ・・はぅ!」
セシルがとうとう欲望を放った。強く締め付けられる。
私は2,3回、セシルの内壁で自身を梳きあげると、中から出ていった。
セシルを降ろしてやると、私の足元にぺたりと座りこんでしまった。

「セシル、口を開けてごらん」
私はセシルの髪に指を差し入れ、上を向かす。
セシルがおずおずと、口を開けた。桜色の清廉な唇。
私は自身の切先を、セシルの唇に擦りつけると、精液を浴びせかけた。
セシルは口内、唇、顎を白濁で汚しながら、恍惚の表情を浮かべている。

カイン・ハイウィンドは恐らく今夜、自分がしてしまったキスによって、セシルがどのような感情を抱いたか、明日はどのような顔をして向き合えばいいのか悩んでいるはずだ。
しかし、セシルにとって、カインから与えられたキスなど、ものの数にもならないのだ。
二人の感情が同じ次元で交わることはない。
この私がいる限り。

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