flowery flower


彼氏のおうちで(5)
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分かってるのよ。
昨日、会った彼女が引っ掛かってるんだって。

椿の同僚である水原さん。

あの、探るような、敵意を隠したまなざし。
彼女にとっては突然出てきた“椿のカノジョ”である私を、値踏みしてた。

椿が好きなんだ。
当の本人、全く気付いてないけど。


昨夜の食事中、話題が彼らの仕事関係に終始したのは、それとなく彼女が私のわからない話題に誘導してたから。

上等じゃんコノヤロー。
私が大人しくしてたのは、あくまで椿に気を使っていたからであって。
黙って大人しくしてる女だと思って貰っては困る。
昔から売られたケンカは叩き買う主義なのよ。


――だけど、普段近くにいるのは彼女のほうだから。

私が彼女と揉めて、同じ仕事場にいる椿がややこしいことになるのは避けたい。
というか、全く気付いてないものを、気付かせるのは業腹だし。

椿がよろめくなんて思いもしないけど、彼女を気遣うところなんか見たくないの。


椿のこと言えないな。
私だって独占欲強いんだ。

椿の柔らかい声も、嬉しそうに細められる瞳も、全部全部、私のもの、なんだから。

照れが先に立っちゃって、素直に振る舞えないけれど、甘過ぎるくらいの椿の態度に安心してるのよ、ホントは。


―――。

椿のいなくなった部屋で、椿の気配を感じながら、鬱々と考えを整理していた私は、自分らしくない後ろ向きさにイライラしてきた。


何でこんなこと考えてるの?

たぶん私たちが再会する以前から、椿を好きだった水原さん。

それがどうしたってのよ。

傲慢にも言わせてもらうけど、椿が好きなのは私なんだから、仕方無いでしょう?

水原さんは関係ない。

要は、私が、椿と一緒に居たいか居たくないか。
それだったら、居たいに決まってる。

関係ないひとが気になって、彼と一緒に居られなくなることを考えて、今傍に居ないなんて本末転倒、バッカじゃないの、私!


急ぎ過ぎてる?

いいじゃない、だって十二年も離れてたんだもの。
その間の分、取り返さなきゃ。


早くダメになったりなんかしない。
無くしたりなんかしない。


そんなことになったとしても、あの頃みたいな子供じゃないんだから。

ダメにならない努力をする。
無くしたら、取り戻す。


出来るはずだ、私たちは。


て、いうか。
私たちの間で、そんな心配するのって、無駄。

お互い他には誰も、いないって、そう思ったはずでしょ。
店長のお言葉を借りると、私と椿は、運命の相手、なんだから。


付き合い始めたばかりで、嬉しくて幸せで、浮かれて、何が悪い!


ゴロゴロしていたソファーから身を起こし、携帯を掴む。
ブチ、ブチ、ブチ、と気合いを込めたままボタンを押して。

繋がった相手に、とあることを切り出した。



バカップル、貫いてやろうじゃないの――。





 

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