ポケモン | ナノ
▼ 何時も待っている

ここはトクサネシティ。トクサネシティにはホウエンチャンピオンのダイゴさんの家がある。
私は毎日、ダイゴさんの部屋を掃除している。ダイゴさんに頼まれたわけでもない。ただ、それは私の自己満足でやってるだけだ。
窓の方を見ると、相棒のキルリアが窓を拭いている。私も机をサッとひとふきして、掃除機に持ち帰る。

「これが終わったら休憩にするかな」
「キルル」
「それにしてもダイゴさん、いつ戻ってくるんだろう」

私はドアを見つめながら言った。ダイゴさんが不定期に帰ってくるとはいえ、この前戻ってきたのが半年前だ。
戸締りは私に任せているとはいえ、さすがに不用心な気もする。ダイゴさんが住所を明かしてないとはいえ、不安だ。
ダイゴさんがチャンピオンについて、この家をしばらく開けると聞いたときは驚いた。

『ええっ、ダイゴさん!戻ってこないんですか!』
『ああ、僕もチャンピオンに趣味にいろいろ多忙になるつもりだ。すまないね』
『せめて1ヶ月くらいは戻ってきてほしいです』
『うーん、困ったな。……そうだ、ななしちゃん。僕の家を見張っててくれないか?』
『え、そんなこと言われても……そんな大役、できるでしょうか』
『大丈夫だよ。ここトクサネはそんなに大きい島でもないし、いざとなればジムリーダーがいるじゃないか。僕はななしちゃんに頼んでいるんだ』
『わ、私でよければ、がんばります』
『よし、じゃあ僕の家の鍵を君に託そう。よろしくね』

そういってダイゴさんはほぼ家を空けることが多くなった。1週間、1ヶ月、3ヶ月ときて半年だ。
半年もあればなにかあることもある。いくらダイゴさんが強いとはいえ不安に駆られる時もあるのだ。
その時、ドアがコンコン、と鳴った。

「あ、はーい」
「やあ、ななしちゃん。おかえり」
「ダイゴさん!」

ドアを開けたのは、この家の持ち主であるダイゴさんだ。ダイゴさんは大丈夫そうにニコニコしている。
私は早速ダイゴさんを椅子に座らせ、キッチンへお茶を入れに向かう。

「久々に戻ってきたけど、前よりキレイになってるね」
「ありがとうございます。キルリアと一緒に毎日掃除してました!」
「キルゥ」
「ありがとう、ななしちゃん、キルリア」

ダイゴさんはそう言って、にこやかに微笑んだ。それはとても優しい微笑みでした。
お茶をダイゴさんと自分、キルリアの分を用意し、私とつられてキルリアも椅子に座る。

「お疲れ様です、ダイゴさん。そういえば半年間、何してたんですか?」
「うーん、そうだね……長くなるけど、話をするよ」

ダイゴさんはそう言って、話し始めた。ダイゴさんを倒すチャレンジャーが現れたこと、チャレンジャーに敗れた後、流星の洞窟での発見などなど。おおよそ30分くらい話していた気がする。
ダイゴさんはお茶を飲み、立ち上がってはドアの方へ歩き出す。

「ダイゴさん、もう行くんですか?」
「うん。まだやることとかあるからね」
「次はいつ、戻ってくるんですか」
「いつかはわからないけど1ヶ月くらいには戻るよう努力するよ」
「わかった、頑張ってね」
「ななしちゃんもいつもお疲れ様。掃除なんて押し付けてごめんね」
「そんな、押し付けとか思ってないです」
「そうか、無理はしないでね」

ダイゴさんはそう言って微笑んでから、家を出た。私とキルリアも家を出ると、ダイゴさんはエアームドに乗って行ってしまったようだ。
それを見送った私とキルリアは、顔を見合わせて、ダイゴさん家のドアに鍵をかけた。

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