▼ お見通し
「あれ、ダイゴさんだ」
私はミナモシティで買い物をしていると、そこでダイゴさんを見つけた。何をしているんだろうと遠巻きになりながら眺めていると、少女が駆け寄ってきた。赤いバンダナが特徴的な女の子だ。
何を話しているのか気になるが和気あいあいと話しているようだった。会話は聞き取れないがなんだか楽しそうでちょっと胸の奥がチクリとする。
「……はぁ(あんな少女に嫉妬しているなんて知ったら幻滅するだろうな)」
覗き見するつもりもなかった。むしろここから去りたかった。
私が去ろうとするとき、ぱきりと足元から音がした。どうやら枝を踏んでしまったようだ。
「ななし?」
「ひぇっ!はっ、なんでしょう!」
この音でダイゴさんと少女が気が付いたらしく、私を見つけてしまった。見つかった私は思わず素っ頓狂な声をあげて固まってしまう。
「どうしたんだい、こんなところで」
「い、いえいえいえ、じゃあ、私はこれで。2人の邪魔をしちゃいけないので」
「待ってください!」
私が去ろうとすると少女が私を呼び止めた。
「私とダイゴさんはバトルの約束してただけです!」
「あ、ああ。バトルの約束……え?」
「ああ、そうなんだ。実はハルカちゃんと今度、バトルしようって約束してね」
「あ、あ〜……バトルかあ」
……どうやらハルカ、と言っていた少女とバトルの約束をしていたらしい。そういえばハルカってどこかで聞いたことがあると思ったがつい最近ホウエンのチャンピオンになったばかりの少女だった。
私はハルカちゃんの方を向いて、「先程はすいません」と謝罪した。ハルカちゃんも「いえいえ、気にしないでください」とにこやかに返してくれた。
「じゃあ、私はこれで。ダイゴさん、いいバトルにしましょうね!」
「ああ!またね、ハルカちゃん」
ハルカちゃんは手持ちからチルタリスを出し、空を飛ぶを命じてそのまま去っていった。
残された私とダイゴさんの間に沈黙が訪れる。先に口を開いたのはダイゴさんだ。
「ななし、もしかして嫉妬してくれていたのかい?」
「いや、それは別に……はい」
「素直でよろしい」
ダイゴさんはそう言って、私の頭を撫でた。ぽんぽんと軽く触っている感じだが心地よい。
やばいな、ダイゴさんには何もかもお見通しかもしれない、そう思いつつも口には出さないことに決めたのだった。
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