▼ 思わぬ事故
「ぐう、ぐう」
「あ、あわわわ、わわ」
私は表に出ているラフレシアを引っ込める。見知らぬトレーナーを眠らせて拉致してしまった。
野生のポケモンと戦ってる時、あんなところにトレーナーがいるとは思わなかったんだもの。許してほしい……と言われても許してくれないだろう。
「こ、これどうしよう」
「……」
私は眠らせてしまったトレーナーをまじまじと見る。流れるような赤い髪にキッとした目つき、ただものじゃない。
起きたら何されるか分かったものじゃない。かといって草むらに放置すれば野生のポケモンに襲われかねない。
「起きるまで待っとくか……」
私はこうして、謎の赤い髪のトレーナーを見守ることになった。いや流れとは言えこんなことをやるとなんか変態みたいだな私……と思ってしまう。
(それにしても可愛い寝顔だ)
「……ん?」
私が眺めていると、目が覚めたのか彼と目が合ってしまう。どうしよう。
そもそもこんなことして許されないとは思ってる。こうなったらすぐ謝ろう。
「ご、ごめんなさい!」
「……フン、次からは気を付けることだな」
彼はそう言って去ろうとする。私は慌てて彼の手を取った。
「ま、待って!」
「なんか用でもあるのか」
「このことは後に謝罪させてほしい。だから、名前、教えて!」
「……シルバーだ」
「わ、私はななしです」
「そうか。じゃあななし、期待しないで待ってるからな」
彼はそのまま立ち去っていった。残された私はただ突っ立っているだけだった。
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