▼ 迎えに来てほしい
「何をしているんですか、帰りやがりますよ」
「あっ、ネズさん……」
私は1人になりたくてスパイクタウンを出て、近くの草むらで1人、木の実のなる木のふもとで休んでいた。
私はここで木の実を取りながら野生のポケモンをスケッチしていたのだ。
「お前がいないとイマイチ盛り上がりに欠けるんですよ」
「私がいなくたって何時も盛り上がってるじゃない」
「おれの気分が乗らないんです」
ネズさんはそう言って私の腕を掴んだ。私は咄嗟に掴まれた腕を振り払う。
きょとんとするネズさんを傍目に私は逃げ出した。
「ご、ごめんなさいーーーーー!!」
ネズさんがやれやれと頭をかいたような気がした。後で謝ろう。
「……ネズさんから振り切ったはいいけど、結構遠くまで来ちゃったなあ」
私は今、ナックルシティ付近の道路にいた。スパイクタウン付近のポケモンより強くはないがそれでも若干強いポケモンがうろうろしている。
襲い掛かってくるポケモンを相手に戦ってきたが、体力がもう限界だ。ポケモンセンターへ連れて行こうとした時、背後からレパルダスが襲い掛かってきた。
「きゃっ……!」
「タチフサグマ!」
突然、レパルダスが吹っ飛んだ。と思ったら見おぼえある人物とそのポケモン、タチフサグマがいた。
私は思わず「ネズさん!」って叫んだ。ネズさんは表情一つ変えず、タチフサグマを戻し、私の方を見た。少し怒ってるように見える。
「あ、ありが……」
「全く、心配したじゃないですか……!」
「ひえっ、す、すいません」
「まあ、おまえが無事でよかったです」
ネズさんはそう言って私の手を掴み、スパイクタウンの方へ歩き出した。
私もまた、ネズさんの手を掴み返し、歩き出す。
「ネズさん、ありがとうございます」
「ふん、これに懲りたらあまり遠くに行くもんじゃありませんよ」
「はい」
ネズさんが少しほほ笑んだ気がした。……いや、多分気のせいだろうが。
私は嬉しくなり、ふふっと笑うのだった。
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