ポケモン | ナノ
▼ 夢の中かもしれない

「あれ、あそこにいるのってチャンピオンなのでは……」
「ミル〜」

私は隣にいるマホミルに尋ねた。
私の目線の先にはガラル中でも知らない人はいない、チャンピオンであるダンデの姿があった。
そのダンデさんが何やらウロウロしながら右へ左へ行ったり来たりしている。周りの人達はそんなダンデさんを遠巻きに眺めているだけだ。

「もしかして迷子とか……ははは、ないよねー」
「マホ」
「おーい、そこのお嬢さーん!」

突然、声をかけられた。声をかけたのはさっきまで右往左往していたダンデさんだった。
チャンピオンに声をかけられた……!と内心驚いている場合でもない。私は冷静になってダンデさんに対応する。

「あ、あの、なんの御用でしょうか?」
「道に迷ったんだ! もしよければ道を教えてほしい」
「あ、はい。どちらへ行くんですか?」
「ポケモンセンターへ行きたいんだ」

ダンデさんはポケモンセンターを探している素振りで目線をうろうろし始める。
私は「ポケモンセンターならここの右を曲がってすぐですよ」と教えた。ダンデさんは「ありがとう!」と言ってまっすぐ走り出すのだった。

「チャンピオン、大丈夫かな……」
「マホ〜」

ああ、これはまた迷子になるな、と思った私とマホミルはため息をついた。
と、すぐさま5分も経たない内にダンデさんは私のいた場所に戻ってきた。息を荒くして膝に手をついている。

「ぜえ、ぜえ……頼む、ポケモンセンターまで案内してくれないか」
「その前に大丈夫ですか?」
「なに、体力なら大丈夫だ」
「じゃあ、案内しますよ」

私とマホミルはチャンピオンと共に歩き出すのだった。
目指すはポケモンセンター。そんな遠くはない。

「いきなりこんなこと聞くのは失礼かもしれませんが、よく迷ってませんか?」
「ああ。オレは方向音痴でな、よく迷う」
「地図とか使わないんですか?」
「地図を使ってみたがいいがオレはよく迷子になるのでな、ハハハ」
「笑いごとじゃないですよ」
「マホ」

談笑しながら私はチャンピオンをポケモンセンターまで案内する。こんな体験、そうそうない。
自分、今、すごくとんでもない体験をしているのでは?と思いながら歩くのだった。
と、そうこうしてる内にポケモンセンターに着いたようだ。

「はい、着きましたよ」
「マホ〜」
「おお、ようやく着いたか!」

ダンデさんは一安心したかのように息をつく。
私はそんなダンデさんを見ながら、「よかったですね」って返す。

「君のおかげでポケモンセンターに着いた、ありがとう!」
「マホマホ〜」
「そんな、お礼を言われるほどじゃ……」
「いや、本当にありがとう」

そう言ってダンデさんはニッと笑う。
私もつられて笑い、ここでチャンピオンとはお別れになるのかなとちょっと名残惜しい気分になる。

「そうだ、君の名前を知りたい。また会えるかもしれないからな!」
「私はななしで、こっちは相棒のマホミルです。ダンデさん」
「マホ」
「ななしか。いい名前だな!」

そう言ってダンデさんは握手を求めるように手を差し出す。
私もつられて腕を差し出し、握手をする。
ダンデさんがここである提案をする。

「そうだ、ななし。もしよかったら夕飯でもどうかな? もしよかったらオレが奢る」
「い、いえ! さすがに夕飯までご馳走になる訳にもいきませんよ!」
「いや、オレの気が済まない。奢らせてくれ」

ダンデさんは頭を下げる。チャンピオンに頭を下げさせるのもどうかと思い、「じゃあ、よろしくお願いします」と言ってこの提案に乗ることにした。
チャンピオンに道案内しただけでなく、ご飯を奢ってもらうなんて多分そうそうない出来事だ。
私は未だ夢の中にいるのでは?と思いながら、マホミルとダンデさんと共にポケモンセンターへ入っていくのだった。


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