▼ 逃げられなかった!
ある昼下がりの午後、私はマリエシティの庭園にいた。
庭園にはトレーナー達がポケモンバトルをしていたり、茶屋でポケモンと一緒にお茶をしている人達がいた。
そんな私は、パートナーのモココと共に庭園を散歩していたのだ。
「それにしても気持ちいいね、モココ」
「メェー」
「少ししたら……あれ、ここにいるのって」
散歩していたら、ある人物を発見した。
白い髪に黒いパーカーの男―――グズマだった。
グズマを発見した私は、モココを見つめた後、グズマに話しかけた。
「やあ、グズマ」
「なんだ、ななしか」
グズマはそういうと、視線を私から逸らした。
私はそんなグズマを見つめ、こういった。
「何してんの」
「おめえには関係ねえだろ」
「もしかしてポケモンバトルに負けたとか」
「あぁん?」
挑発したつもりはないが、私がこういった途端、グズマはつかさずこちらを睨みつけてきた。
モココはそれを見て私の前に立ち、警戒する。
私はモココに「下がって」とお願いし、モココを下がらせた後、未だ睨んだままのグズマを向く。
「ごめんごめん。落ち着いて」
「だったら余計な事言うんじゃねえよ」
「だから悪かったって」
「ケッ、おい、ななしさんよ」
グズマは悪態をつきながら睨むのをやめ、ニヤリと笑いながら私に尋ねた。
これはもしかして嫌な予感がする。
そう思って後ろにいたモココを戻し、逃げようとしたが、腕をつかまれてしまう。
「どこへ行こうっていうんだよ」
「い、いや、別に、逃げようって訳じゃなくて」
「嘘つけ、逃げようとしてんじゃねーか」
「今のグズマからは嫌な予感しかしないんだけど!」
私は冷や汗を流しながらそう言った。
対するグズマはニヤリと笑いつつ、こう続ける。
「ハッ、ちとおめえには俺様の用事に付き合ってもらうからな」
「やっぱりー!!」
「という訳だ、ついてきてもらうぜ、ななしさんよ」
「ついてくるにもガッシリ腕掴んでんじゃないですかー!」
グズマは私の腕を掴みながら、庭園の出口まで歩き出す。
観念した私はグズマに連れられながらこう思うのだった。
(こうなったらとことん付き合ってやるか)
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