▼ 落ちてしまえ
「ズバット、きゅうけつ!」
「ズバッ!」
「ああっ、ハネッコ!」
ここはヤドンの井戸。なんでもヤドンの井戸にロケット団と呼ばれるポケモンマフィアがヤドンの尻尾を売りさばくために乗っ取ったというのだ。
それを止めるために私は井戸へ向かったが、幹部と呼ばれる男、ランスに返り討ちにあってしまったのだ。
「もうそんなもんですか」
「っ!」
私はランスをにらみながら舌打ちする。さっき出したハネッコで最後の一体だったからだ。
悔しいが私には、もうポケモンがいない。こうなった以上は退散したいところだ。
「おっと、逃がしませんよ」
「痛っ!」
ランスは私の足を引っかけ、私はおもわず転んでしまう。
鼻を打ったみたいで鼻血が出る。その様子を見たランスはクックッと笑う。
「なんとも無様ですね」
「……なによ」
「いやなに、ポケモンバトルにも負け、私によって転ばされるあなたを見ると面白くて」
「だから、何だってのよ―――ッ!」
突然唇をふさがれた。ランスの唇によってだ。
これはいわゆるキスというやつだ。なんで敵のあいつにキスされなきゃいけないのか。と思いつつ抵抗しようにも奴の舌が絡み合い、逃げられない状況になってしまっている。
「んッ、はッ、あ」
「……ご馳走様でした」
ようやく唇が離されたと思えば、ランスは涼しい顔して私を見下ろしている。
私はやや酸欠状態になりつつ、立とうとする。その時、ランスが私の腕を掴み、ぐいっと引っ張った。
「な、なにを」
「……貴方もロケット団の1人として、入る気はありませんか?」
「誰が、入るっての!」
「仕方ありませんね」
そう言うと、ランスは私の腹にパンチを入れた。所謂腹パンというやつだ。
私はあまりの衝撃に気を失ってしまう。気を失う前に奴が何かいっていたのか思い出せない。
「……貴方は私に落ちるしかないのですよ」
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