Fate | ナノ
▼ 意識してしまった

「はー、つっかれたー」

私は部屋に戻るなり、ベッドにダイブした。ここ最近はまともに睡眠もとれていなかったのだ。布団のふかふかさがたまらなくなる。
私はこのまま寝てしまおうか、と思ったがまだ化粧を落としてなかったな、と思い洗面所へ向かう。

「さて、化粧でも落とすか」
「よお、ななし!今日も一日お疲れさん!」
「うわあ!」

突然ドアが開き、部屋にずかずかと入ってきたのは燕青さんだ。もう寝るというのにタイミングを考えてきてくれ、頼むから。
燕青さんはずいっと私の目の前に迫り、そのまま壁へドンと押し付けた。あれ、これって壁ドンというやつじゃ。

「えっと、いきなりなんですか?」
「いつもお疲れなななしに俺が元気つけてやろうかなァと思ってな」

燕青さんはニッと笑った。あ、これ何か企んでるような顔だ。

「……それってなにをするつもりで?」
「おっと、そいつを言わせるとはななしってスケベなんだな」
「スッ、スケベ!?」

燕青さんはそう言って「呵々」と笑っている。まさかあんなことをするつもりだったのか、と思い私は血の気が引いた……気がした。
いやでも燕青さんとはたまに食堂で一緒になることはたまにあれどそこまで親しいワケでもない。でもなんで急に迫ったんだろう。

「なんだよ、黙っちまって。このまま食っちまうぞ」
「まーって待て待て!なんで急に私の部屋に来たんですか?私、そこまで燕青さんと親しい仲じゃないんだけども!」
「なにってそりゃ……俺はななしと仲いいつもりだったんだけど違うか?」

燕青さんが顔を近づけて耳元でささやいた。あまりにも急すぎて、私の鼓動が早くなるのを感じる。
そのまま私は壁を背にしながら背中からスルスルと落ちていった。その様子を見た燕青さんがまたニッと笑う。あ、やばい、本当に食われそうだ。

「……食っちまうぞ、ななし」
「ッ!」
「なーんてな!じゃ、また明日な!」

燕青さんはそのまま私の部屋を出ていった。残された私は壁にもたれかかったまま、ドアを見つめているのだった。

「……意識しちゃったかも」

私はそうつぶやいた後、しばらく座っているのだった。


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