Fate | ナノ
▼ いたずらメール

「そろそろ通るはずですね……」

私は手紙を片手にある人物を待っていた。途中横切っていくサーヴァントや職員からの視線が痛い。
その時、目の前にある人物が横切った。ランサーのクー・フーリンさんだ。

「……何してんだ、お前」
「あっ、いやあ、奇遇ですね」
「奇遇もクソもあるか。で、何してたんだ」
「クー・フーリンさん!これをどうぞ!」

私は勢い余って手に持っていた手紙をクー・フーリンさんに渡した。クー・フーリンさんは一瞬ポカンとしたが、すぐに「俺に恋文ってやつかい?嬉しいね」と言って私の頭を撫でた。

「じゃあ早速読ませてもらうぜ。どれどれ……」

クー・フーリンさんは私の手紙を読み始めた。それから少したって、クー・フーリンさんの顔がしかめっ面になった。
あれ?私なんかおかしなこと書いたっけ……。とか思いつつ、クー・フーリンさんの手紙を覗き見た。

「な、なんじゃこりゃーーーー!?」
「うおっと!」

私が大声を出したことにより、クー・フーリンさんがビクッと驚いた。すぐに「ごめんなさい」と謝罪する。
おかしい、こんなことを書いた覚えはない。ちなみに内容はこれだ。

『次に会った時が、クー・フーリン!貴様の命日だ!貴様の筋肉の動きは見切った!貴様の頭わしわしなど痛くもかゆくもない!私の膝枕を喰らいやがれ!シュミレーションルームで決着をつけよう!そして貴様に「愛してるぜ!」って言わせてやる ななし』

……と書かれていたのだ。当然ながら私はこんな手紙を書いた覚えはない。
一体誰の仕業なんだ……と頭をかかえていると、クー・フーリンさんがぶはっと噴き出していた。

「ぷっ、くくく……なんだよこれ……!」
「い、いや、これは違うの!なんか手紙が手違いで……!」
「すまんすまん、笑っちまった。でもこの手紙、面白えな」
「今すぐこれ処分するんで、渡してください!」
「いーや、返さねえぜ」
「ええええええ!」

手紙を返してもらおうと手紙を奪おうとすると、クー・フーリンさんが手紙をスッと上に上げた。つまり返してくれないらしい。
私がぴょんぴょん跳ねたところでクー・フーリンさんには届かない。その様子を見て、クー・フーリンさんは意地悪くニヤリと笑った。

「さーて、これはどうしようかねえ」
「クー・フーリンさんなんて最低です!」

私は手紙を諦め、去ろうとする。が、クー・フーリンさんの手が私の腕をつかんだ。

「離してください!」
「そんな怒んなって、かわいい顔が台無しだ」
「っ!!もう知りません!」
「手紙、嬉しかったぜ。ななし」
「……っ!」

クー・フーリンさんがニッと笑って、手紙をひらひらとはためかせた。
私はこれ以上怒る気になれず、へなへなと座り込んだ。

「おい、大丈夫か?」
「だ、大丈夫です……」
「しょーがねえ、部屋まで運ぶぞ……っと!」

突然、私の視界が上にきた。背中には青が見える。つまりクー・フーリンさんにおんぶされている状況だ。
おろしてください、とつぶやいたが、「いや、それは聞けねえな」とクー・フーリンさんが歩き出す。

「ななし」
「は、はい」
「手紙、また渡してくれてもいいんだぜ」
「……考えておきます」


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