▼ 夢の中で逢えたら
「あれ、ここはどこだろう?」
私は目覚めると、そこは真っ暗闇の世界だった。周りを見ても真っ暗闇、光もなにも見えないのだ。
やみくもに歩くと迷いそうだ。少しここで待ってみる。と自分を呼びかける声が聞こえた。
「もしもーし、お姉さん1人?」
「え?声?」
「そう、オレ」
声のする方を向いても誰もいない。イタズラだろうか。
探し回るのもめんどくさいのでもう一度寝ようとする。
「もう一回寝るなんてひどくない?」
「まずあなたが姿を現してくださいよ」
「残念だけど、オレの姿はこの暗闇と同化してんだわ」
ほら、と声をした方を見てもどこにいるのかわからない。仕方なく、私はその場に座り込んだ。
「ところでさ、いいモン見せてやろうか」
「それってなんですか」
「見てろよ、ほら」
声の主が何をしたのかはわからないが突然、この真っ暗闇に光がポツポツと現れた。それはまるで星のようでキラキラと光っている。
夜空の中にいるみたいでとても幻想的だ。私は思わず「わぁ……」と感嘆の声を上げる。
「どうだい、綺麗だろ?」
「はい。とても綺麗です」
「そうかい、そりゃよかった」
声の主はヒヒヒと笑う。星のような光がさしても声の主はいまだに姿は闇に溶け込んでいる。
このままじゃ姿なんて見えないんだろうな、と思っていると急に睡魔が襲ってくる。
「あ、れ、私……」
「残念だけど、ここでお前とはお別れだな」
「え、ちょっと、待って」
「まあオレはいるからよ、そう残念がるなって」
「せめてな……」
ここで私の意識は途切れた。
「はっ!」
私は思わず起き上がった。周りを見回すと簡素なベッドに机には書類の束。間違いない、ここは私の部屋だ。
あれは一体なんの夢だったのだろう。
時計を見ればもう就業時間前だ。急いで支度をして部屋を出る。
「遅れるー!!」
私はもうダッシュで走り出す。と、そこへある人物が現れた。
「おはよーさん、ななし」
「あ、はい、おはようございます」
思わずあいさつしてしまったが、この人は誰だろうか。黒髪に赤いバンダナをして、褐色の肌にタトゥーのようなものがびっしり書かれている。そんな奇抜な人と知り合いになった覚えはない。
そういえば最近召喚に応じたサーヴァントの1人なのだろうか。でも新しく召喚に応じたサーヴァントとは食堂とかで一度顔を見ているはずだ。
「また、夢で逢おうぜ」
「え?」
そう言って男は消えていった。昨日夢で見た男が夢の中で逢っていた?まさかね……。
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