▼ 前髪論争
「うーん、髪をそろそろ切ろうかな」
私は伸びた前髪を触りながらつぶやいた。
前髪はもはや眉毛を通り越して目がギリギリ隠れるくらい伸びてしまっている。
自分で切ろうと模索していたその時。
「その前髪を切るなんて勿体ない!」
「うわあ!?」
突然どこかから声がしたと思ったら目の前にバーソロミューさんが立っていた。
バーソロミューさんはいきなりまじまじと私の前髪を見つめる。
すると私の手を握り
「その宝石のような綺麗な目をしているのにあろうことか髪を切るなどとはなんということだ!」
「ちょっちょっと!? いきなりなんですか!?」
鬼気迫るバーソロミューさんにたじろぎ、少し後すざった。
突然出てきて髪を切るなと言われても困惑するばかりだ。
どうしたものかと思っていると、私の中で1つの提案が生まれた。
「あの、バーソロミューさん」
「なんだい? まさかその前髪を切ろうとか思ってないよな?」
「前髪を頭の上で縛るのってどうでしょうか」
「むしろ下ろしてるほうが私好みだ」
(だめだこの人、話が通じない)
ややあきらめ気味になりつつ、私はとうとう観念した。
「……わかりましたよ。前髪はもう少し伸ばします」
「本当かい!」
「でも本当に見えにくくなったら切りますね」
「それは困る」
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