▼ 暗闇
「眠れないなあ……」
今は夜中真っただ中、私は夜の廊下を歩いていた。
電気は一部を除いて全て消されており、周りがやや確認できるくらいだ。食堂を目指してあるいているが、誰かとぶつかってもおかしくないのだ。
「あ、あの明かりは……」
明かりを発見し、そこへ向かって走り出す。目の前に人影がゆらりと動いたのも気が付かず。
「っ!」
「うおっと!」
案の定、私は誰かと衝突してしまった。声の感じからして男の人だろうか。腕が見え、支えられていたので転ばずには済んだようだ。
少し漏れる明かりがその人物が誰かを映し出す。ランサーのクー・フーリンさんだった。
「いきなりあぶねえぞ、お前」
「あ、いえ、ごめんなさい!つい光が見えたものでつい走り出してしまいました」
「なんだそりゃ」
クー・フーリンさんが呆れながら苦笑する。うう、なんか悪いところを見られてしまった。
私はそのまま食堂へ入ろうとする。が、クー・フーリンさんが私の腕を掴み、そのまま引っ張られ抱き留められてしまった。
「な、なにを」
「悪ぃ、ちょっとこうさせてくれ」
クー・フーリンさんに言われるまま、私はそのまま抱きしめられていた。なにがなんだかわからないところでもあるが、今顔が熱い。
今食堂に入って誰かと居合わせたら恥ずかしさで消えたいくらいだ。そう言う意味ではクー・フーリンさんに感謝するべきなんだろうか。
「……クー・フーリンさん?」
「あ、ああ。すまねえ」
クー・フーリンさんは私を離す、私は少しよろめき、倒れそうになる。なんとか壁があったので背中をもたれる。
「あの、クー・フーリンさん」
「なんだい」
「先ほどは本当に申し訳ありませんでした」
「気にすんな。食堂に行きたかったんだろ、俺はこのまま寝るぜ」
クー・フーリンさんはそう言って暗闇の中へ消えて行った。残された私は、壁にもたれかかったまま、この場に座り込むのだった。
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