Fate | ナノ
▼ 〇〇しないと出られない部屋

気が付いたら、見知らぬ部屋にいた。
隣にヘクトールさんがいるだけで窓もドアもない。密室空間だ。
気になって壁を叩いてみるも何の反応もない。

「もしかして、閉じ込められた……!?」
「ちょっと待ちな、こんなもんを発見した」

ヘクトールさんが持っていたメモを差し出してきた。
メモには「指をからめて踊らないと出られない部屋です。2分以内に行ってください」と書かれていた。
なんともバカバカしいお題だが、ドアも窓もない密室空間に閉じ込められている以上、信憑性は確かかもしれないと思い始めている自分がいた。

「あの、これ、やらないと駄目ですかね」
「どうやらそうらしいな。お前さんが気絶してる間いろいろ試してみたがうんともすんとも言わねえ。こりゃ踊るしかないみたいだ」

ヘクトールさんがそう言うなり手を差し出した。手を絡めろってことだろうか。
私はおずおずと手を差し出すとすぐさまヘクトールさんの指が私の指に絡めてきた。ヘクトールさんのどことなく真剣な眼差しが私を突き刺すかのように見ていて、照れ臭い。

「さ、踊りましょうや」
「でも、どうやって」
「それは、まー……なんとなくってことで。嫌かい?」

ヘクトールさんがウィンクをしながら尋ねる。嫌ってわけではないが私はあまり踊ったことがないのでどうすればいいのかわからなかった。
そうこうしている内にヘクトールさんはリズムを刻み始めた。右足、左足、腕とヘクトールさんの流れに沿うように踊り始める。
この似たような動きを2分くらい続けているとドアが現れた。踊ったと見なされたらしい。

「ヘクトールさん、ドア、出ました」
「ありゃ、もう終わりか」
「わっ」

ヘクトールさんが指を離すと、私は倒れそうになる。そこですかさずヘクトールさんが私の腰を掴み、立たせる。
ヘクトールさんに「ありがとう」とお礼を言い、ドアへ歩いていくヘクトールさんを見つめた。

「ほら、お前さんも出るんだろ」
「は、はい!」
「お前さんと踊るのは中々面白かったぜ」
「……私もです」

ヘクトールさんがウィンクをすると、私は顔を赤らめた。
もしかしたら惚れてしまったかもしれない。と思いつつ、私とヘクトールさんは謎の部屋を出て行くのだった。



ヘクトールとあなたは『指を絡めて踊らないと出られない部屋』に入ってしまいました。
120分以内に実行してください。


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