Fate | ナノ
▼ 〇〇しないと出られない部屋

「くそ、なんだここは」
「わからない……けどおそらく閉じ込められちゃったみたいだね」

私とアシュヴァッターマンさんはある部屋に閉じ込められてしまった。ドアもなければ窓もない、完全な密室の部屋だ。
なにかどうしてこうなったかは覚えがない。こういうことする人に覚えはあるとはいえ、何の目的があって私と彼を閉じ込めたのかは謎である。

「もしかしてダヴィンチちゃんの仕業?いや、それともP?」
「……いや、この2人ではないようだぜ」
「ん、なにこれ、紙?」

彼が差し出してきた紙を見つめる。どうやら紙には文字が書いてあった。
この紙には「どちらかが愛を叫ばないと出られません。ただし1分以内で」と書かれていた。どうやら新手の悪戯だろうか。

「なにこれ、悪戯?」
「悪戯にしては悪趣味すぎるだろ」
「ってことはこの紙に書いてあることやらないと駄目なのかー……」

私はがっくりうなだれた。愛を叫ばないといけないとはなんという罰ゲームなのか。
アシュヴァッターマンさんに頼めば耳ぐらい塞いではくれるだろうか。と思いつつ、彼に頼もうとしたその時。

「俺はッ、ななしのことが好きだッ!!!」
「!?」

いきなり大声で自分の名前を叫ぶアシュヴァッターマンさん。あまりの大声に耳を塞ぎそうになる。
愛を叫ばないと出られない、とはいえまさか自分の名前を叫ばれるとは思っていなかったが。その拍子にドアが現れる音がした。

「な、ななな、な」
「お、ドアが開いたな」
「いえ、そうじゃなくて、なんで私の名前を」

私はフリーズしそうな体をワナワナと震わせ、彼に問いただす。アシュヴァッターマンさんは頭をポリポリかき、私をじっと見つめる。
そして私をギュッと力強く抱きしめた。また、あまりの行動にフリーズしてしまう。

「わ」
「俺はお前を愛してる、ななし」
「そ、そんな、これは部屋の命令に従っただけじゃ」
「部屋の命令なんかどうでもいいんだよ」

そう言って彼は私を更に抱きしめる。私は顔が熱くなり、耳も顔も何もかもが赤くなる。
そんな私の様子を知ってか知らずか耳元で「愛してるぜ」と呟いた。爆発しそうだ。

「あ、あの」
「なんだよ」
「何時までこうしてるんでしょうか」
「……俺の気が済むまでな」

私は彼の胸にもたれ掛かった。彼もまた、私の頭をポンポンと優しくたたく。
しばらくこうしているのも悪くない、と思う私だった。
私もなんだかんだで彼のことが大好きだったんだろうな、と実感する。目の前の彼もそう思っているのだろう。
気が済むまで私と彼は抱き合っているのだった。ドアが開いていてもお構いなしだった。
と一部始終を見ていたダヴィンチちゃんはそう言っていたという。



アシュヴァッターマンとあなたは『どちらかが愛を叫ばないと出られない部屋』に入ってしまいました。
60分以内に実行してください。


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