Fate | ナノ
▼ 夜の魚

「今日もよく働いたぞっ!」

私はそういってベッドにダイブした。なにしろ仕事を終え、ようやく休めるというのだ。
私はこのまま寝ようと明かりを消そうとする。その時、ドアがコンコンと叩かれた。

「はいはーい、どなたですかー?」
「よっ、まだ起きてたのか」

ドアの叩いたのはクー・フーリン(キャスター)の方だった。こんな夜更けになんのようかなと思いつつ、術クーさんを部屋に通した。
若クーさんは椅子に座り、私もまた、ベッドに腰かけた。

「どうしたんですか?」
「いやなに、寝る前にお前さんの顔でも見てやろうかなと思ってな」

術クーさんはカラカラと笑った。どうやら私に会いに来てくれたらしい。
私はコーヒーでも出そうと立ち上がるも、術クーさんが「いや、俺ももうじき寝るからいい」と言ったのでそのまま座ることにした。

「術クーさんもお疲れ様」
「おう。お前さんもお疲れ様」
「ところで……」
「なんだ」
「顔が近いのは気のせいですか?」

私の目の前にはドカンと術クーさんの顔があった。しかも間近に感じる。
近づいているとはいえこのままいくとベッドまで倒れそうだ。私は慌てて術クーさんの胸板を押す。

「ちょ、ちょっと、近いです!」
「なんだ?俺とお前さんの仲だろ?」
「だからって、これは近すぎますよ!」
「それならいっそこのままするか?」
「!?」

私は驚きのあまりベッドに倒れ込んだ。背中に布団の感触がする。
術クーさんは私を押し倒した状態になっている。これはまずい、逃げられない。
そのまま術クーさんの顔が私の顔にふれ、額と額を合わせる。

「あ、あの……」
「どした?このままやめるか?」
「いえ、いっそこのまま、お願いします……」
「はいよ。優しくしてやるからよ」

術クーさんと私の唇が触れた。そのまま私は魚のように酸素を求め、術クーさんの舌と私の舌が絡みあい、部屋には「はっ」「ふっ」という短い声が漏れる。
明日、起きれなくなったらどうしよう、と思いつつ、私は術クーさんにゆだねるのだった。


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