Fate | ナノ
▼ ぶっきらぼうな優しさ

「痛っ!」
「そんなところに立ってんじゃねえ、邪魔だ」

いきなり廊下を歩いていたら突然誰かに着き飛ばされた。
着き飛ばした相手はクー・フーリン(オルタ)さん……長いのでクーオルタさんと呼ぶとしよう。とぶつかり壁によろめいてしまったのだ。
当のクーオルタさんは何か当たったか?という顔で去ろうとする。そうはさせまいと私はクーオルタさんの前に立った。

「なんだ?」
「いきなりそんな態度はないかと思います」
「ハッ、別にそんなもんどうでもいいだろう」
「よくありませんよ、きちんと謝らないとです」

私を無視して去ろうとするクーオルタさんをなんとか通せんぼして足を止めようとする。
クーオルタさんはめんどくさそうに私をスルーして通り過ぎようとする。私はそんなクーオルタさんを止めようと思わず尻尾を掴んだ。棘が刺さって痛いがそうも言ってられない。

「なにをする」
「クーオルタさんにはきちんと言わないとですよ」
「そんなもん俺にはどうでもいい。さっさと離せ」
「嫌ですよ」
「チッ」

クーオルタさんは舌打ちして私を引きずってでも歩こうとする。私は少し引きずられつつ尻尾にしがみついてる状態だ。
ふいにクーオルタさんが後ろを向いた。どうやら私の手に目が行ったようだ。

「おい」
「なんですか」
「怪我をしてるじゃねえか」
「大丈夫ですよ。そんなの怪我の内に入りません」
「……ちょっと待ってろ」

クーオルタさんは尻尾を振って尻尾から私の手を剥がした。私は思わず壁にもたれ掛かる。
私が手を見ると手には血がほんのり滲んでいる。そんな痛くはないんだけどな……と思いつつクーオルタさんが戻ってくるのを待った。

「私のこと、うざい奴だと思われたかな……」
「戻ったぞ」
「うわあ!」

突然クーオルタさんが戻ってきた。あまりにも急すぎる登場に私は驚いてしまう。
私がぼんやりと立っているとクーオルタさんが私の手を掴んだ。手を掴んだかと思えば包帯を赤いモフモフのようなもの?から出して手に巻き始めた。どうやら手当てしてくれるらしい。

「あ、あの、クーオルタさん」
「黙ってろ」
「は、はい」

話しかけようと思ったら黙れ、と一括された。仕方なく黙ることにしよう。
それからほんの少し経った後に手は包帯でグルグルにまかれていた。爪の後とか包帯に残ってるもののしっかりまかれていた。

「終わったぞ」
「もしかして、さっき消えてたのって」
「怪我させたままじゃ気分が悪いからな」

そう言うなり、クーオルタさんは去ろうとする。
私は思わず、大声で叫んだ。

「あの、ありがとうございます!」
「……フン」

クーオルタさんはこちらを一瞥して去っていった。
私はそんなクーオルタさんが去った後を眺めるのだった。


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