▼ 〇〇しないと出られない部屋
今日、私と歌仙は倉庫の掃除としようと倉庫へ入っていった。
なんとか掃除を終え、倉庫から出ようとすると倉庫のドアが開かなくなってしまった。
いろいろ試してみたが何も起こらない。倉庫なので窓も何もなく、密室状態で閉じ込められてしまったのだ。
「ここはひとまず、助けを待とうじゃないか」
「でも、誰も来なかったらどうしよう」
私は不安に駆られていた。歌仙がいるとはいえ不安なものは不安だ。
このまま閉じ込められたままなのは嫌だ。と思っているとなにか一枚の紙を発見した。紙には「ハグしないと出られません。2分以内に実行せよ」とかかれていた。
なんかの悪戯かなんかだろうか、と思いつつそのメモを歌仙に渡した。
「きっとなんかのいたずらだよね」
「はぐ、現代で言うところの抱擁といったところか」
「……もしかしてやらないと駄目なのかな」
「……主、目をつぶっててほしい」
私は歌仙の言う通りに目をつぶった。すると、頭に手の温もりを感じた。
それだけじゃない、腰にも手の温もりを感じる。恐る恐る目を開けると歌仙が抱きしめていた。
いきなりすぎて私は思わず頭がパンクしそうになる。私が目を開けていることに気が付いた歌仙は耳元で囁いた。
「おや、もう開けてしまったのかい」
「か、歌仙、これは一体」
「何って、抱擁しているんだよ」
「それは、その、えっと」
「僕がこうしたいんだ、いいだろう」
私は思わず頷いた。あまりにも真剣な歌仙の声色に私は頷く他になかったのだ。
と、突然、倉庫のドアが開いた。お題をこなしたと見なされたらしい。
ドアが開いたのにも関わらず、歌仙はまだ私をハグしたままだった。
「……歌仙、ドアが開いたよ」
「……すまない、しばらくこうさせてくれ」
「うん」
それから少しの間、歌仙は私をハグし続けた。
なんだかとても暖かい気分だ、と思いつつ私は歌仙に身をゆだねるのだった。
歌仙兼定とあなたは『ハグしないと出られない部屋』に入ってしまいました。
120分以内に実行してください。
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