▼ 一輪の花
「戻ったぞ、メシと風呂の用意を頼む」
そういうや否や、肥前忠弘は部屋の奥へ行ってしまった。
「もう、相変わらずなんだから」
「主、あまり彼を咎めないでやってくれ」
「でも」
更に文句を言おうとしたら忠弘と同じく遠征に出ていた歌仙兼定に止められた。
歌仙は制止した後、あるものを懐から取り出した。
「これは?」
「今日、遠征で彼が見つけたものなんだ。主が喜ぶと思って摘んできたんだよ」
それはどこにでも咲いている花だったが、懐に入っていたのか軽くしなれている。
その花を歌仙から受け取った後、私は忠弘の元へ行くのだった。
「忠弘」
「なんだ」
「花、ありがとうね」
「別にお前のためじゃねえよ」
そういうと忠弘はそっぽを向いて寝始めるのだった。
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