▼ 夕暮れ
※現パロ
私は学校の帰り道、ある人物を発見した。
ある人物とは私の隣に住んでる肥前忠広だった。肥前忠広とは同じ高校の同級生だが学校には滅多に来てない。
というか学校に来ていたことなどあっただろうか。とさえ思うほどだ。
そんな肥前忠広が今、道端で猫と戯れている。餌やおもちゃとかは持っておらず、ただ素手で猫と遊んでいるのだった。
「……」
(もう少し観察していこう)
「おい」
「え?」
「お前だよお前」
隠れて眺めていようと思ったがすぐに見つかってしまい、姿を現した。
そのまま彼は猫と遊んでしまう。せめて何か言えばいいのに。
「あ、あのさ」
「なんだ」
「なんで学校来ないの?」
「お前に話す訳でもあんのか?えぇ?」
ギロっと彼が睨む。思わず私は「ひっ」と小さい悲鳴をあげる。
そのまま壁際まで追い詰められてしまう。彼と遊んでいた猫も驚いて去っていってしまう。
「そ、それは、ですね……休むのはよくないと思う」
「そーかよ。そいつはご苦労なこって」
「あの、どいてくれませんか……」
「なんだ?ビビってんのか?」
「び、ビビッてなんかいない……!」
「その割に足が震えてるぜ、お隣さん」
そう言って、彼は私の唇に自らの唇を合わせた。それはつまりキスである。
舌が絡みあい、呼吸もままならない。酸素を求めようと必死になるも、彼の舌がそれを許してくれなかった。
しばらくして、私の唇はようやく解放された。「ぷはぁ!」と息を大きく吐き、ぜえぜえと息が荒々しくなる。
「はっ、こんなんで音を上げるとかだらしねえな」
「っ……!」
「じゃあな、ななし」
彼は去っていってしまった。
私は自分の唇を触り、彼の去っていった方を見つめる。
「名前、憶えててくれたんだ……」
彼に気づくことなく小さく呟き、私もまた、帰るのだった。
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