▼ 月に触れる
「あれ?」
私は後ろに違和感のようなものを感じ、振り返る。誰もいない。
私がまた歩き出すとまた気配のような、違和感のようなものを感じる。それでもまた後ろを振り返ってみると誰もいない。
今度は後ろを見ながら歩いてみよう。そう思った時、声をかけられた。
「主、何をしている?」
「あっ、三日月さん。実は後ろになんか違和感のようなものを感じまして」
「それは俺だ」
「ええーっ!!」
三日月さんの言葉に驚かざるを得ない。私が驚きの声をあげると三日月さんは笑って「はっはっは。どうだ、驚いたか」と笑っていた。
なんでこんなこと、と言おうとした時、三日月さんが指を私の唇に置いた。まるでシーッといわんばかりのかのような。
「主、黙っていろ」
「……?」
「隙あり」
「……!」
突然、三日月さんの唇が私の唇に触れた。あまりにも突然すぎて固まってしまう。
ハッと、思い出したときにはもう三日月さんはいなくなっていた。一体何がしたかったんだろう。
私はそんな三日月さんのことを思いながら、部屋へ戻るのだった。
「主……、俺はお前を思っているぞ」
どこかから三日月さんが見て、呟いたとも知らずに。
戻る