刀剣乱舞 | ナノ
▼ for chocolate

「なあ、現世ではバレンタイン……デーっていうんだろ?」
「あ、ああ。2月14日は世間ではバレンタインデーだよ。女の人が好きな男の人にチョコレートを贈る日かな」
「おー」

近侍の忠広が急にバレンタインデーの話題を振ってきた。私は忠弘からそんな話題が出るとは思っておらず、うろたえてしまう。
どうやら忠広はバレンタインデーについてどんな意味なのか聞いてきただけのようだ。そんな忠広に私は聞いてみる。

「ねえ、忠広はバレンタインのチョコは欲しい?」
「くれるならもらう」
「もう、相変わらずなんだから」

とか言って、実は本丸分のチョコレートの準備はしているのだ。だが、今のところ誰にも渡してない。
本丸で皆と会うことはあっても、中々渡しにくいのが現状だ。
忠広にも渡そうと思っても、中々渡す機会もなく、後ろに隠してる状態だ。

「なあ、お前は本丸の皆にあげるつもりなのか?」
「もちろんそのつもりだけど」
「なら、今俺に渡してもいいんじゃねえか?」

忠広が強い視線でこっちを見る。なんか罪悪感を感じるが渡すタイミングをどうしたもんかと目が泳ぐ。
そんな私の姿を見て、忠広は痺れを切らしたのか立ち上がり、私の背後へ回った。とっさに急な行動だったのか後ろに隠したチョコレートが忠広に見つかってしまう。

「おい、これはなんだ」
「あっ、これは……忠広宛のチョコレートです……はい」
「じゃあもらうぞ」

忠広はそう言って、私の後ろにあったチョコレートを持って行ってしまう。私はムードの1つすらない……とか思いながら包装紙を破いている忠広の方を見る。
忠広はチョコレートを1つ掴み、口に入れた。忠広は「うまいな、これ」と呟いた。

「よかった……、実は手作りしたんだ」
「おまえの手作りか」
「うん。ちょっと不安だったんだ……」
「そんなに不安ならおまえも食べろ」
「むぐ」

忠広がチョコレートを私の口に入れた。味見は少ししたがミルクの甘味が広がり、とても甘く感じる。つまり美味しい。
忠広は残りのチョコレートを平らげており、空の箱が目に入った。

「ごちそさん、悪くなかったぜ」
「は、早いなあ……」
「んで、おまえは後ろにあるチョコレートを渡さなくていいのか」
「うっ、それは夕飯時に渡します……」
「そーかよ。じゃ、俺は行くぜ」

そう言って忠広は部屋を出て行ってしまった。
私は本丸の皆に渡すチョコレートを眺めながら、仕事に戻るのだった。


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